老化





人において、花咲いている時期というのは非常に長いものです。開花の輝きを保ち続けるために、人は営々と努力し続けるものなのかもしれません。

実際的に、先天的な資質や養生によってその輝きはより長く保たれることとなりますが、しかしそのような「人」にも早い遅いの差はあれ、徐々に老化が忍び寄ってきます。

一般例として《素問・上古天真論》には以下のように述べられています。

女性は、『二十一歳で腎気が安定し、親知らずがしっかりと生えます。二十八歳で筋骨が丈夫になり、体力も充実します。三十五歳で陽明の脉が衰えて、顔色が悪くなり髪が脱け出します。四十九歳で任脉が虚し、太衝の脉が衰え、天癸が弱くなり、地道が通じにくくなります。このためスタイルが悪くなり、妊娠することがでなくなります。』

男性は、『二十四歳で腎気が安定し、筋骨が非常に丈夫になり、親知らずがしっかりと生えます。三十二歳で筋骨隆々となり、筋肉が満ち溢れんばかりになります。四十歳で腎気が衰え、髪が脱け、歯が枯れてきます。四十八歳で陽気が衰えて上に届きにくくなりますので、顔色が悪くなり、髪やひげに白髪が混じります。五十六歳で肝気が衰え、節々が動きにくくなり、天癸が涸れ、精液が少なくなり、腎の臓が衰え、身体が疲れやすくなります。六十四歳で歯や髪が抜けます。そもそも腎は水を主り、五臓六腑の精を受けてこれを蔵します。このため、五臓が充実していると射精することができるのです。しかし五臓がすべて虚してしまいますと、筋骨が弱くなり、天癸が尽きます。このため髪やひげに白髪が混じり、身体が重くなってちゃんと歩くことができなくなり、子供を作ることができなくなるわけです。』

女性の衰えの端緒は、陽明の脉の衰えすなわち胃・大腸の気の流れが弱ってきたことにより、男性の衰えの端緒は、腎の臓の衰えによるとされています。これは、女性は陰なためにその衰えは陽の部位から顕われ、男性は陽なのでその衰えは陰の部位から顕われるという考え方が背景にあるものです。

けれども、男女ともにその花咲く期間は腎気の安定から起こっているということから考えると、その衰えも、腎気の支えが衰えることから始まると考えるほうが説得力があります。






腎は五臓の精華である精が納まる場所です。腎の安定のためにはすなわち、他の臓気が充実して活動し続けている必要があります。このことが何を意味するのかというと、結局は、健康で活き活きと生きているということが、腎をも養い、人生の花を長く咲かせ続けるコツであるということです。

衰える時期には、いったん完成された器の中の活力が衰えていきます。成長期のように隙あらば伸びていこうとする満ち溢れる力がそこにあるわけではありません。そのため、その衰え方には、それぞれの体質や生活習慣によって大きな違いが生じます。一元の気の器に、亀裂や凹凸や歪みが出てくるわけです。弱いところから衰えたり、怪我をしてきちんと治療していないところから衰えたり、内臓の弱りが表面化して衰えたりするわけです。

このことを器が脆くなってくるといいます。生命の活力によって一度は大きく広がった生命の器の、ところどころにほころびが出始めるわけです。そして、生命力が衰えて鈍感になってきます。

風邪を引いても気づかなくなったり、ちょっとしたことで骨折したり、若いころにはすぐに治った怪我がなかなかなおらなくなったりします。

器の大きさそのものはあまり変化せず、敏感さがなくなり、脆く壊れやすくなるわけです。











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