舌診





顔面診のところでも触れましたが、頭部において、目は肝、舌は心、口は脾、鼻は肺、耳は腎の開竅する場所となっています。そのそれぞれを気一元の場として、さらに五行を配し診察部位として提示されています。

目・舌・鼻・口・耳はそれぞれ頭部という上焦に位置し、五臓が頭部に開竅している場所です。ですからまず最初に、その配当されている五臓の表情がそこに現れていると見なければなりません。

舌は心の開竅する場所ですから、神〔注:意識・精神・生命活動の輝き〕の状態を診るのにもっとも適した場所であると言えるでしょう。

また、舌は部位としても広く、多くの表情を持っていますので、清代以降はとくに温病の侵襲状況を診るための部位として非常の尊重されました。







顔面診臓腑配当の図




舌は左図の五臓の配当という「面」としての診方以外に、舌体と舌苔との関係として「母子」の診方ができます。舌体が母で苔が子。正常な状態は、個人差はありますが、活き活きとしていた感じで淡紅舌薄白苔です。







これは農耕にたとえると理解しやすいと思います。

薄い白い苔が正常な作物であるということです。正常な作物は正常な大地〔注:舌体〕の上にできます。 作物が伸びすぎているものを舌苔が厚くなっている、大いの伸び過ぎて枯れてかけていく(色が変化していく)ものを、食べ物による着色以外には、黄苔から黒苔への変化の中で把えます。

枯れ方には二種類あります。水が多すぎて枯れていくものと水がなくなって枯れていくものです。これは舌体の状態をよく診て、濡れているかいないかで、その極寒か極熱かを判断します。

また、生命の涸竭を示すものに、作物を生み出すことのできなくなった大地があります。それまで育み続けてきた作物の残滓が地上に残っている状態のものを腐苔と呼びます。苔を削るとすっきりと取れて、舌体の本体が裸で現れます。生命が滅びる危険に向かっているわけです。腐苔のようにみえてもそうでなければ、苔を削った後に根がしっかり残ります。まだ生命を育む力が残っていると判断するわけです。

すでに作物を生み出すことがなくなった状態となると、苔のない舌になります。痩せた大地が残っているだけで、大地を覆う作物がなくなっているわけです。そのままの状態で生命力が衰えていくと、舌そのものが縮んでいきます。大地が涸れてその生命が終わります。

舌診を通して生命の変化を見ていますけれども、これはまた、全身の生命の変化に応用して考えることができるということを記憶しておいてください。











一元流