背部兪穴





全身を一元の気としてみるとき、背部は陽の部位ということになります。陽の部位に六臓六腑の生命力の反応が兪穴として出ているということになります。陰の部位である腹診の場合には、点より面を重視してお話していますが、背部兪穴は基本的には点で診ています。

背部兪穴は大きく、明瞭な形で反応が出ます。その兪穴の気の状態を診るわけですから、できるだけ柔らかく触れます。そうすると、硬結の所在ばかりでなく、兪穴の寒熱や邪気の状態が診えてきます。

兪穴には中心がありますので、陥凹の中心や硬結の中心を逃さないよう、やや幅広く診ます。また、寸口の脉を診る場合と同じように、深さを変え、また診る位置を微妙に変えることによって、より立体的な兪穴の構造が診えてきます。







寸口の脉で述べましたように、生命力を診るのだと心を定めて見通していくと、兪穴の形状や寒熱を超えて、そこに生命力の強弱が診えてきます。

私は左右を同時に触れることによって左右差を比較しながら診ることが多いです。

クレーターのように大きな兪穴になってボンボン並んでいる場合があり、教科書どおりに考えるとこれは虚の虚ではないかと思った患者さんがいました。ところおが実は元気でスポーツをし、日々喜々として生活し続けています。そこから、背部兪穴というのは、大きな反応が出やすい場所であるのだなといちおう理解しております。

それに反して、虚損病の人で、これはどうしてもここに反応が出ているべきであろうと思われる腎兪三焦兪胃兪脾兪などに反応が診られない場合があります。このようなときに生命力を見るぞと思って指を当てていると、生命力の打ち返しが弱い場合があります。兪穴の形状よりも気で診る方が実情に合っている場合があるわけです。

うまく鍼をし灸をしていくと、このような兪穴の反応が明瞭に出てきて、「悪化したのではないか」と心配になる場合があります。しかし、経過を聞いてみると、本人の調子は良い。このような場合、反応が出る以前の状態を「ツボが沈んでいる」と表現し、反応が出てきた状態を「ツボが浮いてきた」と呼んでいます。長期にわたって病んでいる場合に多く出てくる反応です。







沢田健先生は、夾脊を一行線、膀胱経の一行を二行線、膀胱経の二行を三行線として、内側に反応が出ているものほど急性疾患で、外側に反応が出ているものは慢性疾患であると述べています。背部というものを、兪穴のある一行だけで診るわけではなく、高さを等しくして輪切りの面で見ようとされていたということですね。重要な観点であると思います。

また、似てはいるのですが、督脉上に腫れや寒えとして反応が出る場合があります。これは膀胱経の虚が督脉にまで及んできたものと考え、注意深く除去することにしています。これは慢性の虚損病に多く診られます。

また、神道や筋縮などに圧痛が現われる場合がありますけれども、これは気欝の反応として、兪穴のほうを調整すると取れることが多いようです。

野口整体で言われている、食べすぎには右の膵兪あたりが腫れる硬結ができるというのはかなり確率が高いです。

また、夏クーラーなどで発汗が抑えられて体調が狂ってしまった場合などに神道に現われる圧痛も、野口整体でここを発汗中枢と呼んでいることと合わせて考えると、まことに面白いと思います。

大椎周辺、肺兪・風門・身柱などに寒えがある場合、手掌で感じてみてもその寒えが深く取れてこないような場合、これは風邪が絡んでいると判断します。

背部兪穴はつながっている場合が多くあります。弱ってつながっている場合は、これは虚がきついなと考えます。腫れて硬い筋張りのようになってつながっている場合は、その下の根の部分に虚の兪穴が隠れています。その尻尾を狙うと、硬結全体が見事に取れることがよくあります。これは、兪穴の虚〔注:すなわち臓腑の生命力の虚〕が基本としてそこにあり、それを補うために筋肉で吊り上げていたのであろうと私は考えています。で、虚している部分が補われて癒えたために、吊り上げる必要がなくなり、筋の張りが取れたと考えています。







背部兪穴は臓腑の名がつけてありますので、そのまま弁証には記載していきます。腑は所属する臓に記載します。











一元流