総論






病因とは、一個の生きて生活している人間が、歴史的にも空間的にも支えられ生かされてきているにもかかわらず、そのバランスを崩してしまう原因のことを言います。

一個の生きて生活している人間が、その人生の中で身体のバランスを崩すには、大きくわけて三種類あります。



1、その一つは、ことに成長期において、今の自分の器を拡張するためにバランスを崩すものです。いわば、より大きな健康状態に向けて一時的にバランスを崩すもので、それにはさまざまな場合があります。有名なもの は子供のはしかがあります。また日常的なものとしては、筋肉を鍛える場合に、炎症という一部筋肉の破壊を伴いながら、それを大きな生命力で乗り越えて、太い筋肉を獲得するということがあげられます。かわいい子には旅をさせろという格言は、ここを暗黙の前提としています。

2、もう一つは、次に述べる三因によるものです。

3、そしてもう一つは、充実した身体の器が弱くなりはじめ、今まで弱かった部分、充分鍛えられてこなかった部分が表面化するものです。これは老齢となって徐々に基本的な体力が弱り始め、最終的には他界の準備をする時期に多く存在します。また、大病の後、精神的な労苦の後、身心の非常な疲れの後、妊娠出産の後などにも現れます。ただ、老齢に達していない段階で急激に器が小さくなったように見える場合には、生まれながらの元気が弱くない限り、回復力がありますから、身心の充分な休養をとることによって回復可能な場合が多いです。







三因学説は、病因について三種類に分けて考える東洋医学の歴史的な方法を言います。この学説は、一元の気の器の増強時期と衰退時期とが人間には存在しているという基本的な視点が欠落していますので、やや乱暴な論ではありますが、より短い時間軸の中で病因を考えるうえで基本的な観点を提示しています。

人生は、日々の積み重ねの上に、腎に精が積まれて充実した器を獲得し、加齢とともに徐々に器を小さくしていき死に向かうものであると考えられます。

三因とはそれぞれ内因・外因・不内外因に分けられています。その具体的な内容の概略は以下の通りです。



内因:七情内傷(精神活動の過不足)。いわゆる怒・喜・思・憂・悲・恐・驚がこれです。精神活動が臓腑の気の状態に直接的に影響することから内因とされています。

外因:六淫の邪気→外邪が身体に病気をおこす。風・寒・暑・湿・燥・火がこれです。それぞれが邪気として身体に影響を与えるとき、疾病を発生させると考えました。時代を下って伝染病が蔓延する事態が起こるにつれて、六淫の邪気という概念では括りきれないとして、疫癘〔注:癘気:伝染病〕という概念が提唱されることとなります。

不内外因:飲食不節、労逸失調〔注:過労・怠け過ぎ〕、外傷、瘀血、痰飲、寄生虫、性生活の不摂生。外因となる天の邪気は避けることの難しいものですが、不内外因は心を正しよく気をつけることで避けることのできるものなので、このように括られています。養生の場所は基本的にはここに存します。

いま少し詳しく見ていくこととします。











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