腰痛の弁証論治


腰痛の弁証論治
病因病理:弁証論治




この患者さんは、25歳の時パソコンを始め、インドア派になり、同時に尿切れが 悪くなり、性欲も減少(ともに現在まで)という 症状が出ている。

これはパソコンに夢中になり徹夜することもあったなど、身体に無理をして、腎気 を損傷したためと考えられる。







29歳 ある日重いものを半日運ぶ仕事があり、腰痛を発症。一 週間くらいで痛み はなくなったものの、その日から現在まで、きつい仕事をすると腰に痛みを感じるよ うになる。

以前から重いものを運ぶことはあっても、それまでは平気であったことや、その後 3ヶ月ほどして、夜間排尿がたまにあるようになったことから、腎の陽虚が進んでい ることが伺える。

またこの頃から、時々週末には疲れが抜けず、だるい感じがすることや、体調が悪 くなると歯が痛む等、腎虚の症状が出ている。

これらの症状は、28歳で夜間の専門学校に入学し、昼間は仕事、 夜は学校と、生 活が忙しくなり、腎気を損傷したことが原因と考られる。

また患者さんは、長い期間空手を習っていた(28歳まで)。適度な運動量であれ ば、肝気を発散し、腎気を養うこととなる。

しかし患者さんにとっては、これが過度な運動量となってしまい、腎気を損傷させる 方向に働いた可能性が考えられる。







一方では脾胃の問題も出てきている。29歳から、心下部(胃の辺り)の痛みが出 て、30歳ではしゃっくりとげっぷが増え、食事をする前から出ることもある。

25歳から食欲が増し始め、同時に体重も増加している。この食欲増加は、陽気不 足を食べることで補おうとするために起きた、と考えられる。

特に31歳現在では、一年で5㎏体重が増加している。この体重増加や、日頃の間食 から考えると、脾胃への負担が続き、そのため消化機能が低下していることが伺われ る。







これは切診での両方の脾募からもわかるように、内湿をためていることからも明ら かである。

この脾募は広く膻中にまで達していて、心にまで影響を及ぼしている可能性があ る。またその他の経穴反応や胃土の冷えから、全身の陽虚が強いことが伺われる。

この内湿は、腎陽が衰えることによって、脾の陽気も衰え、その衰えを食べること によって補おうとしたためにかえって内湿を生じることとなり、ますます腎陽が衰え るという悪循環の結果生じたものと考えられる。

上記のように、陽虚があり強く内湿をためている全身状況から考えると、主訴であ る腰痛は、陽虚が強まったことで、寒湿が停滞し、腰部の経絡気血の流れが悪くなり 起ったのではないかと考えられる。







ところでこの患者さんは、尿切れや夜間排尿、性欲減少などの症状が出ているが、こ れは上記の状況の経過や、患者さんの年齢から考えると、少々強い腎虚の症状である と言える。

また同様に湿痰の度合いも、経過から考えて強すぎる症状である。

これらのことから素体の問題の可能性が考えられる。元の素体の器が小さかったため に、簡単に腎気や脾気を損傷してしまったのではないか。

患者さんには糖尿病家系という遺伝的な要因がある。もともと脾の器が十分に成長で きず、腎の器が充実できていなかった可能性が考えられるのである。







だが、今のところ、便通もあり、出ている症状もそれほど強いものではないことか ら、まだ身体のバランスは保たれていると考えられる。

患者さんの年齢は若く、現在ご本人にとってはさほど困るほどの症状も出ていないよ うだが、今後年齢を重ね、腎気の損傷が進めば、バランスが崩れ、大きな問題を引き 起こす可能性があり、早めの治療が望まれる。







まず、陽気をたて、湿痰を払うことを第一目標。その後適宜、補脾、補腎をおこな う。

主訴である腰痛に関しても、陽気が強まり、寒湿が除去されることで、経絡気血の 流れが良くなり痛みも改善するのではないかと考える。

また日頃から脾胃に負担をかけないような食生活、腎を損傷することのないよう、十 分な休息をとり無理をしない生活を心がけることが大切である。







[弁証] 湿痰 脾虚 腎虚

[論治] 陽気をたて、湿痰を払う。その後適宜補脾補腎







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病因病理:弁証論治











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