36歳頸背腰部痛弁証論治


36歳頸背腰部痛の弁証論治
病因病理




患者さんは25歳の頃、それ以前までの身体を動かす仕事からPC作業の仕事に転職さ れ、同時期から主訴である「肩こりや背中の痛み」が出てきています。

PCの仕事は目や頭をよく使うため、上焦に気の鬱滞を起こしやすくなります。また仕 事が変わったことで身体を動かすことが減り、肝気の発散が上手くできなくなり、肝 鬱を起こし症状が出たと考えられます。

また患者さんは小学生の頃から、ずっと便秘がちであります。現在は便秘薬を飲まな いと4、5日排便がなくなり硬い便となります。このことから脾気の弱さ、さらに肝 鬱が脾に影響して脾の運化作用を低下させていることが伺えます。

上記の肝鬱の状況も併せて考えると、患者さんは肝鬱脾虚を起こしやすい素体である 可能性があります。







さらに患者さんは便秘薬を常用し便通をつけていらっしゃいます。便の状態は軟便あ るいは下痢状であります。便秘薬は身体を冷やし脾の陽気を損なう可能性がありま す。便秘薬を服用することで脾気の虚損を徐々に深くし、結果ますます便通がつきに くくなっていることが考えられます。

また患者さんは普段から食後、腹部の張りや胸焼けの症状があります。このことは摂 取した食物の量に脾胃の消化力が追いついていないことの現れです。脾気が弱ってい るところへさらに食べ過ぎで脾胃に負担をかけているという可能性があります。

こうした脾気の問題は左右の足三里穴の大きな虚、脈診(右関上:浮・滑・弦)等に も現れています。

つらい時期は夏・季節の変わり目・梅雨時であり、脾虚から内湿を溜めていることが 考えられます。内湿の問題は、身体がだるい・手足がむくむという症状からも伺われ ます。







患者さんは出産後症状が悪化しています。

31歳で第1子、34歳で第2子を出産。特に第2子出産後からは症状が悪化したこ とを自覚、腰痛も発症、だるくて痛いという状態でした。

出産は女性の身体にとって大きな負担となる場合があります。

患者さんの場合、出産による負担(腎気の損傷、気血の消耗)が回復されないまま子 育てという忙しい時期に入り症状が悪化してしまったことが考えられます。

もともと肝気が鬱滞しやすかったところに、出産によって腎気を損傷、それが回復さ れないまま、それでも頑張って肝気を張り続ける状態です。

肝鬱はさらに腎気を損傷します。腎気が損傷されるとさらに気の上昇を押さえられな くなり、ますます肝鬱がきつくなるという悪循環を生じている可能性もあります。

脾の消化機能は腎によっても支えられています。出産によって腎気が衰えることで、 脾の働きを十分にバックアップできなくなったことが考えられます。

また脾気の弱りがあったところへ、出産による気血の消耗が加わったわけですから、 気血の状態も回復していないことが考えられます。

第1子出産後から時々夜間排尿があるようになり、現在も他の排尿関係の症状(残尿 感・尿切れの悪さ・赤茶色の尿)が時々ある、いつも翌日に疲れが残る、手足のむく む時期は夕、ということからは腎気の弱りが、生理の出血の量が少なくなった、生理 の周期が遅くなった(35~40日周期)、夢をよくみる、眠りが浅い等からは腎気の弱 り、血虚が考えられます。

しかし生理後期には症状の軽減がみられ、生理後の疲れがないことから、腎気の弱り はまだそれほど深くはないとも思われます。







患者さんの症状は生理の状態と関連しています。

もともと肝気が伸びやかでないこともあって、生理前に肝鬱が強まり症状が悪化し、 生理が始まり肝鬱が解消されると症状が軽減されます。生理前は陽気が全身に立ち上 がり気が偏在しやすく、普段より腎気が虚すため気滞がなお激しくなり症状が悪化す ると考えられます。

患者さんの場合は、脾腎の虚のためにますます生理周期による気の偏在を支えきれず にいると考えられ、また生理前の肝鬱が脾気に影響している可能性があります。

患者さんの症状は現在悪化傾向にあるということですが、一時期体調がよくなった時 期があります。それは34歳第2子出産の後で、一時は症状が悪化していますが、そ の後ビールをやめて食事制限を行い体重5㎏減少、その結果体調がアップしたそうで す。

これは食事制限をして脾胃に負担をかけることが減り、脾気の損傷が回復したことで 全身の体調が良くなったということです。このことから患者さんの体調の問題は、脾 気の問題が中心であることが考えられます。







患者さんは、身体の不調を抱えながらも、今小さいお子さんの子育ての真っ最中で す。ストレスも感じておられるかもしれません。けれどもなかなか気分転換をした り、身体を休める余裕がない状態だと思われます。

できる限り食事時間を規則的にとり、量はとりすぎないこと、夜は早めに休む等これ 以上脾腎を傷めない生活を心がけることが大切です。

治療としては、便秘薬の服用はやめる方向で、それでも便通がつくよう脾腎をしっか りバックアップしていき、多少の肝鬱にも耐え得るようにしていくことを目指しま す。







【弁証】脾虚 腎虚 肝鬱

【論治】健脾 疏肝理気

    まずは脾気をたてることで全身の状態を改善させる。







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