治療指針:生活提言


アトピー、肩こりの弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



現在の主訴であるアトピー性皮膚炎が出始めたのは、中学生の頃からで、その後徐々に悪くなっていく。高校から20歳頃に掛けては、アトピーの酷さがピークとなり、数度入院をすることとなる。

この過程を見ると、ストレスと生活の不摂生(大食、酒、タバコ)がひどくて、脾気、腎気をきつく傷め続けて、アトピーが悪化していくのが窺える。またこの頃は器が充実してくる時期でもあるので、肝気も盛んになっていくが、この肝気が強くなりすぎて気の偏在が起こり、上では首肩の凝り、下では腰痛を感じるようになったと考えられる。この肝気の強さが肝鬱となり、脾腎の損傷と影響し合い、悪循環になって、アトピーがきつく出ていた時期だと考える。

その後、心身ともに落ち着きを取り戻し、アトピーは入院するほどの悪化は無いものの、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら生活する。







25歳で結婚するのをきっかけに、アトピーを安定させるための入院治療を行う。そこでの食事制限のおかげで脾気が立ち、アトピーが落ち着いて夜眠れるようになったために腎気も養われたと思われ、全般に体調が良いと自覚できるようになった。

その後入院治療で良くなったアトピーだが、結婚して新しい土地での生活や仕事で慣れないこともあり、ストレスが掛かるなど肝鬱でアトピーは悪化することもあった。

27歳で妊娠、出産をして、完全母乳のみの育児を始めて2ヶ月が過ぎた頃から、徐々に疲労感が強くなっていき、体重が減少し始め、便秘や下痢を繰り返すようになった。これは、離乳食になるまでミルクを飲まない子供だったため、母乳のみで育て、またよく母乳を飲む子供だったため、この患者さん自身の身体を休める暇が無く、十全大補湯を服用するも身体の回復が追いつかない状態で腎気の虚損が大きかったと思われる。そんな状態で夏に旅行をして無理をしたことで、一段と腎気を落とした。その後、お通じも乱れだしたことから、脾気もかなり損傷したものと思われる。そのためアトピーも一時期悪化することとなった。







30歳現在の身体の状況をみると、梅雨時、台風が来る前、蒸し暑い日などに身体がだるかったり、肩凝りがしたり、頭痛がしたりと体調が悪いことが多く、湿気が大きく影響している様子が窺える。そして、お通じのすっきり感の無さ、大きな脾募の存在、時折みられる厚めの白苔などからも、しっかりとした内湿の存在があると考えられる。

この内湿により気機の疏通が悪くなることに加えて、以外に強い肝鬱がそれに拍車を掛けていると思われる。この肝鬱は、話して受ける印象や「疲れる」という言葉とは裏腹に、起きる時じっとしていられないことや時間があると外出するなど、以外に肝気を立てやすいことから推察される。この内湿と肝鬱で上下の疏通が悪いところに、下部に溜まりやすい内湿が外寒と反応して「寒い日に足が冷える」という状態になりやすくしていると考える。

この内湿を生む原因として、まずしっかりと内湿を排泄できない脾気の弱さが考えられ、お通じが出ているにもかかわらず、すっきり感がないことからもそれが窺える。そしてこの脾虚は、三陰交を始めとする足の経穴に冷えの反応が多いことを考えると、本体に脾の陽虚があるのではないかと推察される。そのためにこの脾陽虚を補完しようとして、胃の陰虚が起こっているのではないかと思われ、それが右関上の中~浮に掛けての滑や大きな脈状として現れていると考える。

そしてこの脾の陽虚があるために、衛気としての肺気が傷られやすく、風邪を引きやすくしているとも思われる。ただこの肺気に関しては、もともとタバコを吸っていたことや、小児喘息は治ったものの風邪で喘息を併発しやすいことを考えると、肺気自体の弱さもあると考える。







以上のような身体の状況を考慮して、現在のアトピーの状態を見ると、このアトピーも湿気に大きく影響を受けていることが窺える。そして蒸し暑さで悪化したり、暑い時期はアトピーがジクジクして熱感があったりと、熱が絡んだ湿熱になっている可能性が高い。そのため油物などの食事で胃熱が強くなると、アトピーも助長される。

またこの湿熱を悪化させるもう一つの要因に、肝鬱からの鬱熱も考えられる。これは、春やイライラした時にアトピーが悪化していることから窺える。先にも述べたが、肝鬱が以外に強いために気逆して平素から肩凝りや頭痛を起こしやすくしている。肝鬱により鬱熱が起こると、それが胃熱を助長することとなり、気逆があると上焦でのアトピーを強めることとなり、気逆が無ければその鬱熱は湿邪の重濁性と相まって、下肢のアトピーとなって現れる。そしてこの鬱熱は、右神門の硬結などをみると心にも影響していることが窺え、それが口内炎や眠りの浅さとも関連しているものと思われる。







ただ、この肝鬱に関しては、20代前半の頃に脾腎の虚損と肝鬱が共に強かったために起こっていたアトピーと比べると、現在はアトピーの悪くなり方もましであり、頭痛や上焦の置ける凝り感も減っていることを考えると、肝鬱は随分と小さくなっていることが窺える。

ここで腎気の状態をみて見ると、眠りが浅かったり、産後から続く疲れやすさや翌朝に残る疲労感を考えると、産後に起こった腎気の虚損は今もあると思われる。ただ排尿関係に異常が無いことや疲労の回復が早くなっているなど、案外腎器はしっかりしており、現在も回復傾向にあると思われる。日常的にその器を上回る肝気の使い方で腎気に負荷を掛けたり、産後著しく落ちている脾気によって支えが弱くなっていることもあり、夕方になるとまだまだ疲れやすさなどの症状を出しているが、脾気に比べればしっかり回復してきていると思われる。この腎気の状態は、眠りが浅いながらも、十分に睡眠時間を取っており、規則的な生活を送られていることが大きく影響していると思われる。

このように脾陽虚と胃陰虚を中心として、それに内湿、肝鬱が加わり、時に腎虚が絡むことにより、アトピーを始めとする身体の状態の変化を複雑にしていると思われる。




弁証論治



弁証:脾陽虚(湿盛)、胃陰虚、腎虚

論治:温補健脾、補腎







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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