治療指針:生活提言


腰痛肩凝り疲労感の弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



この患者さんは問診での詳しいお話から、精神面の不安定さを持った方である事が伺われる。

子どもの頃は誰もが心身ともに器が小さく不安定で、しっかりとしていないものである。しかし社会や家庭に守られ心身両面とも徐々に成長し、やがて外界の変化にも動揺しない安定感を持つことが出来るようになっていく。この患者さんの場合は、11歳で初潮を向かえていることから肉体的な器はそれなりに成長できていたものと思われる。しかし大人になっても、なんらかの理由で精神面での安定感を得ることが出来にくかったのではないかと考えられる。







精神的な面での不安定さがあるために、多少の刺激でどうしても感情の高ぶりが起こりやすく、それが身体にも影響して心身不安や熱症状などの様々な病変を起こしてしまう。過度の感情は気を直接動かすため、速く深く臓腑を損傷させてしまう。それが、22歳でのうつやバセドウ病の発症へと繋がったと思われる。

22歳、就職でますますストレスが強まり、24歳ではうつ病を再発。イライラが増し、気持ちのままに暴飲暴食を繰り返してしまうことで脾腎を痛め続けてしまう。そしてそれまで自覚のなかった便秘の症状が強く出てくる。強まる肝鬱によって脾気が抑えられ、さらにうつ病治療での多量の服薬や冷たい物の多飲、便秘薬や浣腸、湿痰の増加などの負担が加わり、脾気の損傷が明確に現れてきた時期であったと言える。

25歳頃にバセドウ病の服薬を中止する事ができている。この時期体重が増加傾向だったことから考えると、増加した湿痰によって気の流れが鈍くなり心熱や肝熱をも抑えられた。そのため、脾腎の損傷は続いていたものの、服薬を止めてもバセドウ病の症状が出なかったのではないかと考えられる。







28歳で仕事を辞め専門学校に入学。そして実習後就職を断られ一挙にうつ病が悪化してしまい、そのまま数ヶ月の入院に至る。

このように経過を追っていくと、この患者さんは精神面での不安定さを抱えながらも、仕事や学校にがんばり続けることでストレスを溜め込み、感情、食欲、行動面での制御がうまくできなくなってしまい、その結果肉体面でのバランスまで崩す事となってしまったと思われる。

しかし36歳で転機が訪れる。継続していたカウンセリングによって大きな精神的変化があった。この変化から、患者さんの精神的な安定感が以前よりも増し、うつ病が徐々に改善していき服薬を止め、自虐的な行為も自然に治まっていく。またこの時まで増加し続け69キロまであった体重が、ここから食事を改善させ徐々に減少させることができる。体重が減り、湿痰が落ちてもバセドウ病の再発が起きない。このことからもこれまでの様々な病態の主たる原因が、この精神的な不安定さによるものであったということが明確に理解出来る。







現在、体重は53キロ、以前より湿痰が減り脾気への負担は減ってきていると思われ、便通も改善してきている。

しかし仕事では非常に気を遣っている、仕事中はだるさや肩の痛みを忘れる、帰宅後興奮がなかなか収まらないなど、素体の状態以上に無理をして肝気を張って仕事をこなしている事が分かる。またストレスで症状が悪化、相談する人がいないと不安になる、更衣室で動けなくなるなど、依然としてストレスが強く、精神的な面でも不安定な状態であることが分かる。

主訴である肩こりに関しては肩関節の痛みへと悪化。この肩関節の痛みはストレスで悪化することから、心や肝の熱が影響して起きていると思われる。また生理周期が非常に乱れた状態である。肝鬱がきついために上焦に気が上逆し、下焦が虚した状態が続いているためと思われる。

また切診の状態から風邪の内陥が考えられ、これが冬期のうつ症状を起こしている可能性がある。また風邪があるためによけいに上焦の鬱滞が強まってしまっている事が考えられる。

このように現在は、以前ほどの強い精神的な問題がなくなりそれほど強く臓腑を損傷させることはないものの、やはり素体以上に肝気を張っている事や、また感情のコントロールも未だ不安定であるため、回復が思うようには追いついていない状態なのではないかと考えられる。




弁証論治



弁証:肝鬱腎虚(上実下虚) 風邪

論治:疏肝理気 補腎 風邪を払う







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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