治療指針:生活提言


やる気が続かない弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



成長期にかけて、やや少食で痩せていた。運動を行ってそれなりに食欲はあったが、就職で運動を辞めると、食欲が落ちたことから脾胃の弱さが感じられる。また切診時に数脉になったり、緊張を自覚できないところや、子供の頃からの夏の異常な汗は、環境の影響を過剰に反応しやすい状態と考えられる。このことは肝陰(器)が小さく、肝陽が高ぶりやすい素体であることも推測できる。就職活動の異常なテンションの高さや、逆に就職活動後のテンションの低さは、肝陰(肝の根)の弱さから、肝陽の不安定さを現しているたものと考える。ただこの器の中でバランスの取れた状態を保っていき、大きな問題もなく成長していった。







23歳就職後、心身の疲労はあるも、自身の器の中で肝気を張り、仕事をこなしていた。ただ25歳から、ストレスの為に喫煙を始めたことが、肺気の損傷となり、華蓋が不安定になっていったものと考える。同時に継続する脾胃の弱さによる少食の為に、気血ともに徐々に不足気味の状態になっていったものと推測する。

26歳になると、徐々に精神的・肉体的に疲労が強くなり、ストレスも強くなる。その中で無理をして肝気を張って頑張り続け、次第に肝鬱が強くなり、頚部の凝り感・頭痛の症状が出てくる。肝木乗土から、脾胃の弱さに拍車をかけ、軟便が多くなり、また肝への血の補充も充分でなくなる。腎気の損傷も大きくなり支えが少なくなり、肝陰虚の悪化と華蓋の不安定さも加わり、さらに肝気が上逆しやすくなる。そして肝鬱状態と腎気の損傷の悪循環となる。そして、この時の強い肝鬱気滞は心気に影響し、やる気が出ない・感情の消失などの症状が発症したものと考える。また腎気の損傷も併さり気虚も強くなり、動く気がしない症状となる。この時点で大きな腎器の損傷があったものと考える。







29歳以降、仕事を抑えてストレスが減少し、肝鬱状態が軽減する。同時に心脾腎の損傷も軽減し、主訴も軽減してくる。自身の器に順応した生活を保つことができた。だた頭痛・頚部の凝り感の継続から、少なからず肝鬱状態が継続していることが伺える。少食・軟便の多さの継続から、脾腎の弱さも継続していることが伺える。また残尿感・尿の切れの悪さ・翌日に疲労が時々残ることが継続していることから、この間も充分に腎器を回復できなかったことが推測できる。

38歳になると、責任のある仕事を任され、心身の疲労とストレスが再び強くなる。ただ就職後の仕事による継続した精神的ストレスは、精神面(心)を鍛え成長させていた側面もあったものと推測する。つまり精神(心)の器を大きくし、ある程度精神的ストレス・心への影響を受け止められる状態であったと考える。そして、その状況で肝気を張り続け、肝鬱が強くなり、徐々に主訴が再発してくる。一方では26歳時と比較すると、継続している喫煙により、さらに華蓋は不安定になっていると考えられる。脾腎の弱さも継続し、肝陰虚の状態も充分に回復できてなかったことも考えられる。この結果、肝鬱になりやすい状態であったことも推測できる。そして再び脾腎の損傷の悪循環を繰り返していくことになる。またこの時期の仕事中の汗の多さと全身の痒みは、鬱熱から心へと影響を及ぼしていると推測ができ、肝鬱の強さを感じとることができる。しかし、肝鬱気滞からの心気の影響は少なかったものと推測する。

このような状態が継続し、40歳の12月頃から主訴が最悪の状態となる。結婚の中止も重なり、精神的疲労も強くなる。肝気の上逆が激しくなり、目の充血やイライラ感も強くなる。そして全身の気虚、脾腎の損傷も重なり上焦の肝鬱気滞が強くなりお血をつくり、大椎右のシビレの発症に繋がったものと考える。大椎周辺・胸膈上部の細絡からお血の存在を確認することができる。この激しい肝鬱による腎気の消耗は、肉体的疲労と重なり、心身への過度な負担となり、生命力を損傷し続けていたものと推測する。この時期はすぐに眠りに入れていたことから、生命力の回復の為に充分な睡眠を身体が求めていたものと考える。そしてこの腎気の消耗の継続は、大きな腎器への負担であったものと考える。その後に気づく、耳鳴りの発症からも伺うことができる。







40歳の3月末で退職し、大きな心身のストレスから解放され、仕事による激しい肝鬱状態が徐々になくなり、同時に心脾腎の損傷も軽減し、主訴も軽減し軟便も少なくなってくる。しかし、徐々に将来の不安等が内的ストレスとなり、再び肝鬱状態になっていったものと推測する。その中で弁証論治の考察を開始する。それが過度な思考(思慮)状態となることもあり、さらに肉体的な活動量の減少から、脾胃の活動を弱める結果になったものと考える。その為に、内的ストレスとしての思慮の鬱滞が起きやすく、肝鬱状態に影響を与えているものと考える。そして、この肝鬱状態が強くなると、回復していない心脾腎に影響を与え、主訴の発症を繰り返す原因となっていると推測する。

また眼の奥の痛み・前側頭部の頭痛の頻度が多くなってきている。これは肝鬱気滞の影響と、弁証論治の考察により、パソコン等で眼の使用が多くなったことと、腎精不足(腎器の損傷)による眼精疲労の影響から、特に眼とその周辺の気滞が強くなったものと推測する。頚部の凝り感が少ないのは、以前程の肝鬱気滞の強さは無く、影響が少ない為と考える。また腎気の消耗も少なく、心身への過度な負担は少なくなって、生命力は回復傾向であると考える。そしてこの肝鬱状態により、上焦に陽気が鬱滞することが多く、眠りに入りにくくなる。また相対的に下焦が虚して、排泄の力が不足し便秘になりやすくなったものと考える。

一方、耳鳴りの症状の継続から、腎器は未だ充分に回復していないことが伺える。これは、肝腎同源として肝器(陰)から血として精を補充している可能性も考えられる。このことは、素体の肝の根の弱さをさらに悪化させ、さらに肝鬱になりやすい状態となり、主訴の状態をつくりやすい身体にしている可能性を考えることができる。




弁証論治



弁証 腎虚・脾虚による気虚

論治 補腎 健脾







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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