治療指針:生活提言


右後頭部の偏頭痛の弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



幼少期はかなり虚弱で、頻繁に風邪をひき長引いていたことから先天の気(腎気)が少し不足していたことが伺える。

思春期になり徐々に体力がついてきたが、体重もかなり痩せ型で初経も18歳までなかったということは、腎気がなかなか盛んにならなかったのではないか。

そしてそれは、この患者さんが若い頃から現在に至るまで、疲れるとすぐに膀胱炎になることや、夏のクーラーや冬の冷えにとても弱いという腎陽虚の体質にも繋がっている。

20歳で結婚しその後50歳近くまで姑と同居、さらに夫の仕事関係の人達を頻繁に家庭接待するという多忙な生活だったが、持ち前の負けん気、つまり肝気を張れるだけ張って姑や夫に尽くしたようだ。結婚してから目覚ましを使ったことがないというところから、いかに肝気を張っていたかが想像できる。そしてこの頃からすでに出てきた入眠困難と眠りが浅いという症状もそれを裏付けている。

また42歳で閉経しており、やはり腎器が少し小さいため腎気の衰えも早かったのではないか。

50歳ごろ姑と別居し、夫の仕事も一頃のような忙しさがなくなり、あまり肝気を張る必要がなくなった。それに伴い、それまで肝気によって抑えられていた脾・胃が開放され体重も増加していった。

これは、患者さんの腎気の弱さのために求心的な気のベクトルが緩んだことも原因の一つである。

ご本人の自覚で、70歳頃より疲れが翌日に残るようになり、それまで平気だった睡眠不足がこたえるようになったことを考えると、肝気を張ろうにも、それを支えていた腎気がいよいよ本格的に弱ってきたのではないか。

つまり先天的に弱かった腎の器がさらに小さくなり始めたと思われる。

以上、時系列に沿って五臓を考えると、先天的な腎気の弱さがあり、肝気の張りすぎという生き方さらに加齢に伴うさらなる腎器の虚損という構図が見えてくる。

この患者さんは長年、肝気を張り続けることにより日常生活を送り、少し気逆がおこっていた。普段は気逆により正常な舌を呈し、今回のように肝気を張れなくなると、淡白舌が現れてくるのではないか。

さらに、冷えによって悪化する慢性的な神経痛や年中冷たい手足から、内寒の存在も考えられる。







今回の発症は引き金となった夫の入院で、肝気を張り(さらに気滞が起きやすい状態になり)、付き添いにより腎気を消耗(外邪に対する抵抗性の低下)してしまう。

そのような腎の陽気が弱っているときに、外出で冷気にあたることにより簡単に寒邪が侵襲し、内寒と結びつきさらに腎陽を傷つけ寒凝気滞をおこし、経絡の疏通が悪くなって、片頭痛になったと思われる。

また、主訴がめまいへ変化したことについては、次のように考えた。

夫の入院中、腎とともに肝にもかなりの負担がかかり、肝気を張るための根(肝陰)も弱っていた。

体質的な腎陽虚が目立ち、さらに寒邪の影響により激しい症状が現れる。内寒と結びついた寒邪を外に追い出そうとしてさらに腎気を消耗する。

初診時における、腎の陽気回復に重きをおいた治療により幾分寒邪は緩んだが、弱った腎気を補い肝の根をつけるところまではできず、腎気が不足し、肝陰も弱ったところで、肝気の暴走となり内風によりめまいが起きたのではないか。

腹診の関元付近の反応や、背候診の腎ユの表面的な張りと中心の弱さなどは腎気が寒邪と闘争しているが、やはりその腎気の衰えを現しているものと考えた。




弁証論治



弁証

腎虚
肝陰虚
寒凝気滞(膀胱経脈)
内風(気逆)

○論治

補腎
補肝陰
温通膀胱経脉
熄風降逆







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

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