治療指針:生活提言


関節リウマチの弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



出生時に未熟児で産まれ、幼少期に身体が弱かったこと、また18歳から続く蛋白尿や出産後に大病をすることなどから、器が小さく、腎気も弱かったことが推測できる。

それでも無事に成長し就職もできて、無理をしなければ仕事もこなせていたこの患者さんの大きな転機となったのが、両親から反対された結婚である。

年齢差がある夫が前妻の子供との関係を新しい家庭に持ち込むため、新婚から精神的な苦痛が重なり、長女や長男の出産後も肝気を立たせることが多かった。

元々、腎気があまり強くない上に、産後の腎気が落ち込んだ時にかなりのストレスがかかり、腎気は肝気を支えることができず、橋本病や大静脉血栓などを発症したのではないか。(橋本病や大静脉血栓の東洋医学的な病態は、問診不足で明らかにできないが、現代医学的な病態から考えてみても、甲状腺機能の低下や下肢大静脉の血流不全などが起こるのは、やはり腎気の損傷はあったと推測した)

また患者さんの何事もきっちりしたい性格が災いし、このストレスを割り切ることができず、さらに夫の性格が強く患者さんの気持ちを押さえ込んだために、10年以上にわたり肝気が暴れさらに腎気を損なってしまう。

しかしながら、この患者さんは、定年を迎えた夫に代わり20年近く、リウマチ発症以後も痛み止めを一切服用せずに仕事を続けており、この意志(魂)の強さがあったからこそ、この身体で仕事をやり抜くことができたという面と、その強さゆえに、その後、継続して腎気を傷めてしまい病が深くなってしまったという両面を持ち合わせている。

仕事をしていた頃は、休日に関節痛が悪化するという問診もこれを裏付けているのではないか。

このようにして、ストレスと過労も重なり少しずつ気虚が深くなっていったと考えられる。







40歳の頃に時々出始めた起床時の手指の腫れは、風邪が内陥しているところに、体質的な脾虚が疲労により後押しされてしまい、内湿が発生したときにだけ、一時的に軽い痺証の症状が現れたものと思われる。

風邪の侵襲時期ついて四診情報からは明確にできないが、リウマチ発症と同じ時期に、目、鼻、口の乾きや黄鼻が喉へ落ちるなどの症状が現れていることから、この時期には風邪が上焦に影響を及ぼしている可能性がある。

流産以降には気虚が少しずつ酷くなっていったと考えられるので、風寒邪の侵襲を許してしまい、それを追い出すための正気が不足して、自覚症状があまりなく内陥という状態になったものと考えられる。

そして、43歳には梅雨時期に症状が悪化するようになったことから、疲れると食欲が落ちる、夏痩せするなど、体質的な脾虚が一段階悪化し、この時期にある程度の内湿が発生することにより、前述の風寒邪と合わさり痺証が成立したのではないか。

また痺証の性質については、最初の2、3年、痛む関節の移動も速く、変形や疼痛が持続していないことから、風寒が主体であったことが伺える。

しかし、その後は侵襲スピードが速くなったり緩慢になったりと一定せず、患部は腫れが残ったり、再び痛んだりとすっきりしないで、患部が徐々に増えていくことなどから、風寒湿が複雑に絡み合いながらも徐々に湿邪が主体となってきたと考えられる。

また、四肢の筋がかなりやせていることを筋痺としてとらえると、脾虚のレベルが高いことを示しており、やはり湿邪が主体となっていったことが裏付けられる。

風邪によって症状が悪化するというのは、新たに風邪が入ることにより、気機の流れを阻害するため、新たな患部が増え、さらに内湿を溜まりやすくするという悪循環を形成し、徐々に悪化していったものと思われる。







そして、この患者さんの器の虚損につながったのが、50代後半のステロイド治療である。そもそも、気虚がかなりひどい状態でステロイドを服用するということは、腎気不足のところへさらに無理やり腎気を引き出すことになったのではないか。

そこで腎器を損傷してしまい、今度は服用をやめるとそのリバウンドで腎気不足がより酷くなり、全身症状が急激に悪化したものと考えた。

ただし、全身の痛みや発熱が現れたのは、ステロイドを止めて結果的には腎を休ませることができたことや、クリニックでの漢方薬や関節局所の灸で、陽気が補われることにより、正気が回復し内陥していた風寒湿邪との闘争が激しくなったという面も考えられる。

このクリニックでの治療を続けたことにより、開始から半年後には腎気がある程度回復し、発汗や尿量が増えたことによりある程度の風寒湿邪を排泄することができ、倦怠感と熱感が回復したものと考えた。







また現在の身体の状態として、腹診で見られる、胃土の冷えがきついのや、章門の抜けは、脾虚がかなりのレベルになっていることを示している。

気海から中極の溝は気虚のレベルが高いことを示しており、右尺位弦脉や小腹の冷え、太谿や腎兪の反応から、腎気の損傷が全身の気虚のベースとなっていることが推測できる。

さらに、舌辺に細かい瘀点が見られるのは、気虚によって気滞が起こりそこに内湿がからんだため気滞がきつくなって瘀血を形成しやすくなったものではないか。

既往歴の大静脉血栓や子宮筋腫なども気虚がその本体で、下焦に気滞が起きやすくなった結果と思われる。

患者さんは今でも、緩慢ではあるが関節痛が悪化しており、上述したような身体の状態からも、脾腎の虚は深いと考えられる。

漢方クリニックの治療により、ある程度は排泄できた風寒湿邪もやはり取りきれてはおらず、内陥していた邪気が徐々に正気を傷つけ、年齢的な腎気不足も重なり、再び悪循環に陥っているものと考えられる。

そして、さらに関節痛の範囲が広がれば、ますます身体は不自由になり、動きが落ちるため、陽気不足に歯止めがかからない状態が懸念される。




弁病



【痺証】
性質:着痺
侵襲部位:筋痺から骨痺




弁証論治



弁証:腎虚、脾虚湿痰、風邪の内陥、肝鬱気滞、(着痺)

論治:補腎、健脾化湿、疏風散寒、疏肝理気










主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











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