治療指針:生活提言


嘔気が続く弁証論治
病因病理:弁証論治



病因病理



この方は、子どもの頃からお腹が弱く、よく痛くなっていたということから、 脾気に影響が出やすい体質と思われる。

大学時代は、ストレスがあるとお腹が痛くなったり、気持ちが悪くなっており、 かつ、常にお腹が痛かった記憶があるということから、恒常的にストレスのある 生活だったと思われる。肝気を張り続け、脾気に影響を及ぼしていたのだろう。

そんな中、20歳でバセドー病を発症し、体重も45kgから40kgに減った。 病院の治療で症状を抑え、落ち着いてからは体重43kgほどに回復した。

大学の研究室に配属されてからは、深夜の帰宅や徹夜等で、睡眠時間が 少なかった。そんな生活を3年間続け、肝気・腎気を消耗していったと 思われる。そして体力の限界を自覚するまでに至り、就職を決意した。

主訴の嘔気も、ひどくはないが、この頃から感じていた。







26歳で就職した頃から、体調がひどくなっていった。

新しい環境・仕事のため、肝気も張っていただろうし、職場や通勤電車の クーラーがきつく、弱っていた身体にますます追いうちをかけたと思われる。

研究室時代にすり減らした肝気・腎気がさらに消耗され、五臓のバランスで みると肝腎という陰気がよりいっそう弱くなった。それは、この頃出ていた 「目の奥がキュッとする・疲れやすい」「夜、腹痛でトイレに何度もかけこむ」 「生理が不安定で経血量も減った」という症状からも窺われる。

また、この頃の体重は40kgとなっており、バセドー病回復後の体重から 再び3kg減っている。飲食物から十分に気が取り込めていない状態が 続いていると思われ、全身的に気虚であるとも思われる。

27歳前後で嘔気がひどくなり、実際に吐くことがあったのも、陰虚・気虚の ため、気逆が起こりやすくなっていたためであろう。朝食後動いたときに 嘔気を感じることが多いのも、まだ身体が十分に動く準備ができていない 状態で、食事をし負担をかけ、かつその後肝気を張って動くため、気逆が 起きやすいのだと思われる。運転中や電車内でも肝気を張っているため、 他人の臭いをきっかけにして気逆を起こす。外食では嘔気が起こるが、 自宅では肝気を張らなくてよいので、起こりにくい。

同じ時期に出現し始めた、第2の主訴「のどの詰まり・咳」も気逆によるものと 思われる。また、異常に口やのどが渇く症状は、度重なる気逆により 発生した熱が影響したためであろう。







しかし、就職した頃から鍼灸院に通い続けていることや、研究室時代の 睡眠不足生活からの解放等で、時間をかけて少しずつ回復していると思われる。

ただ、嘔気のために食事を十分にとることができず、消化不良気味で 気を取り込む量も少ないので、回復速度は遅く、気虚の状態は長引いている。

また、切診・上背部の反応から、風邪の内陥も疑われる。この方は、長い間 風邪を引いている自覚はなかったものの、風邪を身体に引き込んでいた可能性が ある。いつ頃から内陥させていたかは不明だが、これもまた、気虚を 長引かせている一因なのかもしれない。

35歳・36歳でプチ断食をしたとき、一週間くらいはお腹の調子が良かった。

このことから、長い間、肝気の影響を受け続け、脾気は弱っているものの、 脾器自体は壊れておらず、休ませると回復する力があると推測される。

なので、最近の、朝食を抜いて出勤するという習慣は、脾器を休ませるという 意味ではよいように思われる。実際、嘔気の心配もないとのこと。

そして、2週間前に食あたりでお腹を下したとき、嘔気はひどくならなかった。

これは、深いダメージを受ける前に排泄できたため、全身状況を悪化させる までに至らなかったのだと思われる。

気虚であるにも関わらず、すぐに排泄できたのは、軽い外邪であったからか、 もともとお腹を下しやすいため偶然すぐに排泄できたのか、それは分からない。

ただ、思うに、この方は、脾胃を守ろうとする力が強いのではないだろうか。

ストレスに対処するために、お腹の中を空にして、負担をかけないようにする。

お腹を下しやすいのも、嘔気も、その働きの表れの一端なのかもしれない。

そのため、脾器を壊すことなく保てた可能性もあるのではないかと考えている。




弁証論治



弁証:気虚 脾気の弱り 風邪の内陥
論治:補気 脾気を応援する 風邪を追い出す







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











一元流
しゃんてぃ治療院
ビッグママ治療室