子供の頃はアトピーがあったが、20歳頃にはアトピーは気にならなく なったとのことで、脾肺の弱さも器の成長とともにそれなりに充実して いったことが窺える。ただ大人になってからもずっと痩せ気味の体型で あり、食べても太れないとのことから、脾気はそれほど強くはないと考 えられる。しかし、ゆっくり噛んで食べ、冷たい物は取らない、規則正 しい食事時間など、自分の脾胃の器を超えない日常の食生活が養生と なって脾胃を守っていると思われる。
初経から30歳くらいまでは生理前になると下腹部が痛くなっていたが、 35歳を過ぎた頃から胃の痛みに変わっていった。これらの痛みは生理前 のみに起こっていることから、この方にとって生理を起こすためには多 少の肝気の昂ぶりが必要であると考えられ、その根底には腎気の器の小 ささがあると考えられる。もともと人より冷え性との自覚があり、いつ からかは分からないが手足の指先が冷えやすいのも腎器が小さく、気虚 傾向にあるためと思われる。
このように脾腎の器が小さいにもかかわらず、これまで大きく体調を崩 さずに過ごしてこられたのは、無理せず自分の器の範囲内で生活がなさ れているからだと考えられる。
ただ小さめの腎器であるがために、37歳で妊娠を希望してもすぐには妊 娠できず、鍼治療や漢方治療の助けを借りることで38歳の時になんとか 自然妊娠したものの、流産してしまった。
流産後は悪夢を見るようになり、生理前には気分の落ち込みがひどかっ た。生理周期も少し長くなった。流産によりかなり腎気を損傷したこと が窺える。それでも持ち前の養生的生活習慣により、少しずつ腎気は回 復していき、悪夢や気分の落ち込みは1年ほどで無くなった。ただ、生理 周期は長くなったままであることから、流産前の腎気の状態と比べると まだ回復が不十分であると考えられる。
鍼灸治療により、腎気を流産前まで回復させ、そこから更にもう一段腎 気を底上げすることで妊娠に繋げていきたい。
弁証:腎虚
論治:補腎
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