起老園先生腹診述法

【心中】心煩心悸心中懊悩心気不足


心煩というものは、手には微虫が蠢動するような感じがするものです。
心悸というものは、糸飾りがゆらゆらと揺れるような感じがするものです。

心というのは、膻中のことで、両乳の間のことをいいます。
心中というのは、心が広がったようなものをいいます。
心胸というのは、さらに広がったものです。

心中微煩するというのは、心煩の軽いものです。
煩と悸とは、煩の中に悸があります。
手に覚えがなければわかりません。

心中躁というのは、心胸中どこといって定まったところがなく、あちこちタクタクと騒がしいことです。たとえば物に驚いたり恐いものに出会ったりしたときに、手足が震えるようなことをいいます。

心中懊悩というのは、心煩の甚だしいもので、心煩とも心悸とも異なります。心煩かと思うと、胸の骨が少し高くなって、胸の内があちこち揺らぐように手に応ずるものです。少し痛みを感じます。たとえば泣きたいのをこらえるような感じです。これを結痛といいます。手で按してみないとわからないものです。眼中には少し憂いを含んでいる感じがします。

心胸苦煩というのは、心煩して呼吸が穏やかではなく、心胸の中に微熱があり、手足の中心も熱しているものです。これを五心煩熱といいます。

心気不足というのは、心煩の甚だしいもので、眼中も穏やかではなくなり、眸子を忙しく突出しているように見えるものです。



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