長沙腹診考

心下痞鞕


痞鞕の鞕は硬と同じです。なめし皮と訓みます。心下を按ずると、手にこたえて実するものが痞鞕です。

『東洞遺書』には「心下で手に当たるものがあるものが鞕です」と述べられています。

『薬徴』には「人参の主治は痞堅 痞鞕 支結です」と述べられています。その分量の多少から推測して理解していってください。

また『薬徴』に「人参は心下結実の疾患を治します」と述べられているのは、大義を述べて痞堅云々の症候を悟らしめようとしているものです。

同書に「人参は、心下痞鞕して悸するものを治します。黄連は、心中煩悸して悸するを治します。茯苓は、肉(目閏)筋惕して〔訳注:にくじゅんきんてき:筋肉がぶるぶる震えて〕悸するものを治します」と述べられていますので、腹候はますます審らかになってきます。

私が伝えている腹候から東洞の著書を考え、また東洞の著書から私の腹候を考えて、これを実地に検討していくと、仲景氏の方法が粲然と明らかになってきます。



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