長沙腹診考

心下痞鞕満


心下を按ずると、痞鞕でもなく、鞕満でもなく、手頭にくりっと感じるものは十棗湯の症で、心下痞鞕満です。

『類聚方集覧』等に痞を刪(けず)り鞕満とだけあるのは間違いです。


付言

私がこの症を初めて診て手に入れたのは、昔、年郷にいたときでした。ある老婆が冬から春にかけて頭から汗が自然に流れ出るように出ていました。私は黄耆や麻黄の剤を与えましたが効果がありません。ある時、診ていると、手頭に感じるものがあります。これは十棗湯に違いないとこの処方を用いたところ、一剤で頭汗が止まり、再び出ることはありませんでした。


傷寒を患っているある男子がいました。熱はやや下がりましたが、心下がひどく痛みます。下剤を与えても治りません。心下を按ずると前の件のように手に感じます。そこで十棗湯を与えました。数回下痢して、痛みはすぐに取れました。

その後この症にあうとこの処方を用い、効果が上がりました。腹診の妙は、手術〔訳注:手で診る技術〕の熟練にあります。心をよく用いてください。



一元流
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