長沙腹診考

拘攣


拘攣は、孔安国(11世紀)の『論語縲絏(ろんごるいせつ)』の注に、「縲は黒索です、絏は攣です。罪人を拘(とら)えること」と述べられています。世に拘攣されるとも言います。腹中を診る際、手頭に当たってかかわり引きつるものがあるとき、これがすなわち拘攣です。

『薬徴』に「芍薬の主治は結実して拘攣することです。芍薬と大棗とは大同小異です。大棗は、拘攣に似ており、細く琴の糸のようにリンと引きつるもので、攣引強急するものです。」と述べられています。

『東洞遺書』には「拘急とは拘攣のことです。攣は引きつり、急は急迫です。」と述べられています。芍薬の症は世に最も多いものです。分量の多少に従ってその処方の意味を考えてください。両脚のつけ根を探ると大絏〔訳注:だいるい:太い縄〕のようなものがあります。これが芍薬甘草湯の腹症です。心を深く沈めて診てください。


付言

ある十六才の女子が、左脚が攣急して歩行に非常に苦しんでいました。私が芍薬甘草湯を与えたところ、数ヶ月で治りました。

ある婦人が、いわゆる労症を患い、殆ど危篤の状態でした。診ると、強い裏急があります。裏急とは、拘攣結実して腹底に沈着しているものです。そこで小建中湯を与えました。その夜は瞑眩してひどく吐き下しました。私は、「これは薬力が徹(とお)ろうとしているものです。」と告げ、ますますこれを攻めたところ、数十剤を服したところで治りました。



一元流
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