長沙腹診考

臍下不仁


不仁の仁は、桃仁や杏仁の仁です。〔訳注:不仁とは、〕仁が充実していないこと、〔訳注:すなわち〕気が行きわたらないことを言います。少腹不仁 手足不仁 身体不仁など、すべて麻木して自由にならず知覚がないものです。


付言

江都である男子を診ました。臍下を按ずると空洞で手頭が没するほどです。暑い中なのに氷のように冷えています。八味丸を与えたところ、数剤で治りました。

ある男子、少腹が拘急して腹力が臍下に充ちていません。時に強い痺れがあり、小便不利の症もありました。前方で治りました。

北総の飲岡村に四国の行者が二人、庵室に長年住んでいました。園中には麻が茂っており、その若芽を摘んでひたし物などにして食べたところ、その夜は身体が痺れて両脚とも立つことができませんでした。翌朝、隣家の者が行ってみると、言葉が通じず酒に酔ったような感じです。このような状態が一日つづき、夢からさめたように突然治りました。また佐原の某がある時、麻の実二合ばかり炮って食べたところ、急に両脚が痺れて歩くことができなくなり、翌朝まで治らなかったということです。これらのことから考えると、痺れて知覚がなくなっているものを麻木とか麻痺と呼んでいるのは、麻から出た言葉なのでしょう。



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