長沙腹診考


動とは、静の反対です。動いて止まらず、騒がしいという意味があります。

胸腹を診ると泉が湧き出るようにモックモックと、あるいはトッカトッカと手に感じるものがこれです。

『遺書』に「動は脉動ではなく、ただ動くものです」と述べられています。東洞先生の『傷寒論』竜骨牡蛎湯の処方の下に、煩躁や狂驚によって実際に動があるものは、龍蛎〔訳注:龍骨牡蛎湯〕の主治であると治療法が定められています。これは、千古に未だ発せられていない〔訳注:歴史上これまで述べられたことのない〕確論です。


付言

銚子である病者を診ました。喘息で胸中に動があり、流れるような自汗があります。牡蛎湯を与えたところ、響くように反応して治りました。

三州の吉田である男子を診ました。胸腹に動があり、髪が抜け落ち、時に失精しています。桂枝加竜骨牡蛎湯を与えたところ治りました。

二十才ほどの書生で、気志が鬱閉して非常に短気〔訳注:呼吸が浅いこと〕でした。診ると上逆して胸腹に動があります。前方を与えて治しました。



一元流
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