崩漏





崩漏とは、月経周期・経期・経血量すべてにわたって非常に失調し ている状態で、経血が月経でもないのに下っている状態のことを言います。 突然大量に経血が下るものを「崩中」「経崩」と言い、たらたらと間断な く下り続けてるものを「漏下」「経漏」と言います。このように崩と漏と はその意味としては異なっていますが、「崩は漏の甚だしいもののことで あり、漏は崩の緩やかなもののことである」として、臨床的にはこれを同 じ類として把え、崩漏と呼んでいます。

崩漏は婦人科における難病であり、かつ急性の重病に入ると思われ ます。崩漏についての病名やその概念が一致していないので、臨床的にも 良い治療効果をあげることが難しく、急激にその陰血を消耗し滅ぼしてい くため、全身の健康状態にも非常に悪い影響を与えます。ですから、この 崩漏には高い研究価値があると考えられます。







伝統的には、陰道から血が下る証で、その血の勢いが崩〔訳注:激 しく大量であったり〕漏〔訳注:少量がめんめんと長期にわたっている〕 のような状態であれば、すべて崩漏の範疇に属すると考えられてきました。 そして崩漏は、「月経が甚だしく乱れている状態である」と考えられてき たわけです。しかしもし崩漏を明確に月経の範疇に入れようとするのであ れば、「崩漏は陰道からの出血を指していう」「しかしこれは多種の婦人 科疾患において共通してみられる症状である」と指摘しなければなりませ ん。

このように崩漏に関して基本的な概念が定まってはいませんので、 崩漏についての病因病理や弁証論治などについての説明なども、確かな規 範に従ったものとはなっていませんでした。そこで、ここでは、崩漏に関 する記載と臨床的な実践に基づいて、崩漏の範囲を月経の疾病の範囲に定 めることにします。そしてその他の疾病における崩漏に似た下血症は、そ れに関係する場所で論じることにし、崩漏の範囲には属さないものとしま す。









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