産後の下痢の状態と診断






臨床表現



分娩後から産褥期間にかけて、排便の回数が増加し、時に便の状態 が下痢状になったり・水様便になったり・腸が鳴って下痢したり・急に便 意をもよおして下痢したり・便の臭いが腐った卵のようになったり・明け 方に下痢したり・未消化便であったりするものです。

また、精神的な疲労感や倦怠感や食後腹部に脹満感があったり・食 欲が減少し胸が悶え悪寒発熱や身痛があったり・肛門に灼熱感があり心煩 して口渇があったり・腹部がつかえて脹りげっぷをして食欲が減少したり ・寒を畏れ腹部を暖められることを好んだりするといった症状を伴うこと があります。

淡白舌で、薄白苔あるいは黄膩苔あるいは苔が垢づいていて汚なら しかったり、薄白苔だったりします。その脉状には、緩弱・濡緩・濡数・ 沈弦・沈遅といったものが現われます。




診断と鑑別診断



本病は、産褥期間中におこり、大便が希薄となって回数が増加し、 あるいは水様便となるということを主症状としていますので、確定診断は 難しくはありません。けれども、腹痛に裏急後重を伴ったりする産後の痢 疾〔訳注:赤痢系統の下痢〕とは鑑別しなければなりません。産後の痢疾 には、腹痛し・裏急後重し・赤白色の膿血便を下すことを主たる症状とし、 その多くは夏季や秋季に発病します。これに対してここで扱う泄瀉には、 腹痛と後重〔訳注:腰や肛門の重だるい痛み〕が現われることはあります が、裏急〔訳注:腸の痛み〕はなく、赤白色の膿血便を下すことはありま せん。ここに注意して鑑別診断していきます。









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