裏証篇





裏証とは、病が内部や臓にあるものである。

病気が内部から発生する原因は、七情・労倦・飲食によって傷られたり・酒色によって困窮させられたためである。この全てが裏証である。

このように言うと実に判り易い感じがするが、内傷と外感との間の似て非なる部分を明確にしておかなければ、表証を裏証と判断したり裏証を表証と判断したりして、大きな害を人々に与えることになる。

ゆえに明確に弁証しなければならない。









一、微熱があっても、じっとりと汗が出て止まらない・身体に酸痛・疼痛・拘急する部分がない・脉も緊数ではないといったものは、表の熱ではない。




一、症状は外感に似ていても、悪寒せず反って悪熱し、表証が全く無いものは、内熱が盛なのである。




一、表証の病気で小便が透明で出易いものは、邪が未だ裏に入っていないことが判る。




一、表証がすでに具わっており飲食に異常がなく胸腹にも変わったことがない場合は、病気が裏に伝わっていないとする。

もし嘔気・悪心・口苦などの症状が現われ、心胸が満悶して食欲が無くなっていれば、表邪が胸中に伝わって徐々に裏に入ろうとしている状態である。

もし煩躁して眠れず・乾渇して譫語し・腹痛自利する等の症状がある場合は、邪気が裏に入っているのである。

もし腹脹喘満し・大便結硬し・潮熱して黄斑が出・脉も滑実を呈する場合は、まさに陽明病の胃腑裏実の証である。大いに下すべきである。




一、七情内傷について。

喜びが過剰なものは、心を傷り気が散ずる。心気が散ずるものはこれを収め養う。

怒りが過剰なものは、肝を傷り気逆する。肝気が逆するものはこれを平し抑える。

思いが過剰なものは、脾を傷り気が結する。脾気が結するものこれを温めて豁く。

憂いが過剰なものは、肺を傷り気が沈む。肺気が沈むものはこれを舒めて挙げる。

恐れが過剰なものは、腎を傷り気が怯える。腎気が怯えるものはこれを安め壮する。




一、飲食内傷について。

食物の気が滞って蓄積したものは、脾気の実である。これを逐って消してやるとよい。

食物を運化することができないものは、脾気の虚である。この場合は暖めて脾気を助けるとよい。




一、酒湿によって陰を傷り、熱して煩満するものは湿熱の病である。これは清泄するとよい。

酒湿によって陽を傷り、腹痛瀉利して嘔悪するものは寒湿の病である。これは温補するとよい。




一、労倦によって脾を傷るものについて。脾は四肢を主るので中焦の気を補うとよい。




一、色慾によって腎を傷ったものについて。

陽が虚して内に火が無いものは、その気血をともに培わなければならない。

陰が虚して虚火が有るものは、その真陰をもっぱら補うべきである。




一、痰飲を患うものには必ず本がある。

その本を求めて治療すべきである。標だけを治療するのは良い方法ではない。

詳しくは本文の中にある。




一、五臓が傷られている場合は、当然弁証し難い。

しかし、中に有るものは必ず外に形として現われる。

ゆえに肝が病めば目が視え難くなり色も青くなる。

心が病めば舌が動き難くなり舌の色も赤くなる。

脾が病めば口は味覚が無くなり色も黄色くなる。

肺が病めば鼻で香臭を嗅ぎ難くなり色も白くなる。

腎が病めば耳で聴き難くなり色も黒くなる。








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