そもそも人の身体には経脉と絡脉とがあり、 |
奇経八脉は医家の要道ですすので、よく理解しておかなければなりません。十二経脉は《霊枢・経脉篇》にあり、その流れも明らかです。後世、経絡に関しては多くの書物がありますので、学者がこれを考察していく際、実に理解し易くなっています。八脉は素霊難経および甲乙経にその大概が述べられていますが、明瞭ではないため、後学がこれを理解することが困難なものとなっています。また、後世の医書は汗牛充棟であるにもかかわらず、八脉についてきちんと書かれているものを見たことがありません。滑伯仁はその十四経発揮において、初めて奇経八脉の全篇を著していますけれども、その言葉を尽しているとは言えませんし、経の解釈についてもいまだ明確でない部分が存在しています。明代の瀕湖・李時珍は《奇経八脉考》を撰しています。これは言葉を尽くし、その意味も明瞭なものとなっています。すべてはここに備わっているというべきでしょう。故に私は、敏ならざるものではありますけれども、《内経》《難経》及び《甲乙経》《十四経発揮》などに書かれている奇経八脉についての要点を抜きだし、この注解を著わす際に、李氏の《奇経八脉考》を本として撰述することとしました。
世に十二経の是動所生などの病を知る者は時にはありますけれども、奇経の生ずる病については絶えて知る者はありません。ああ、十二経の陰陽は何が総べ何が約しているのでしょうか。任督蹻衝維帯の八脉こそが、手足六陰六陽を
古より奇経の中の任脉と督脉とには専穴があるため、その大概を知っている者はあり、著している者もあります。しかし、それもただ、腹背の中行を弁じているだけで、その流れの詳細まで述べているものではありません。
そもそも衝脉は十二経の海であり、蹻維帯任督は陰陽の総約〔伴注:陰陽を総合し集約させたもの〕なのですから、疾病の原因、治療の根本は、この奇経八脉にあると考えなければなりません。
奇経とはそもそも、正経に対して名づけられているだけなのですから、ただ奇の文字に拘わってこれをおろそかにすることがあっては、けっしてなりません。
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