上焦神蔵 第四節 心血




神は無形の気です。無形のものはそれだけで保たれることはありません。ですから心臓の形はまだ開いていない赤い蓮華のようで、その中に常に血液があり、神気を含蔵(がんぞう)しているわけです。

神は燈火のようなもので、心血は油汁のようなものです。油汁があって燈火の明かりがともります。油汁がなければ燈火の光明もないのと同じです。仲景はこれをまた水魚にたとえています。神は魚で、水は心血です。水がなければ魚鱉(ぎょべつ)〔訳注:魚やすっぽん〕も住むことができません。心血がなければ神気が宿ることはできません。人が怔忡(せいちゅう)する〔訳注:どきどきする〕のは、心血が不足して神気が躁動するためです。水が少ないため魚鱉が跳動するのと同じです。

神は南方離火の象、腎は北方坎水の象です。南方の離火は陽が極まって一陰が生じる始めであり、北方の坎水は陰が極まって一陽が生じる始めです。ですから心の陽中に一陰の血があり、腎の陰中に一陽の気があります。これもまた天人一理の自然のありさまです。



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