上焦神蔵 第十三節 気海




《霊枢・海論》に四海の理があります。海とは、物が集まり会するところを言います。胃は水穀の海であり、衝脉は十二経の海であり、脳は髓の海であり、膻中は気の海であるとします。

膻中気海は両乳の間にあたります。全身の陽気がここに集まり会します。水穀は胃の中に入って、先に蒸し出された気が升って膻中で会集し、これが呼吸させて肺気を助け、心神を養います。これを名づけて宗気と呼んでいます。宗気が集まるところを気海と言います。

また下焦の臍下にも気海の穴があります。陰中の陽 坎中の気〔訳注:すなわち命門の火〕が集まるところを指しています。心は南方の陽火です。腎は北方の陰水です。けれども独陰や独陽は存在しませんから、心の中に陰血があり、腎の中に陽火があります。離〔訳注:《易》離火(りか)で心を象る。上下の陽爻の間に陰爻が挟まれている〕の中に一陰を含み、坎〔訳注:《易》坎水(かんすい)で腎を象る。上下の陰爻の間に陽爻が挟まれている〕の中に一陽を蔵すという理がこれです。離中の一陰は陽を助け、坎中の一陽は陰を助けます。人の心血は上焦の陽を助け、腎中の陽火は下焦の陰を助けます。これが陰陽互根の道であり、独陰独陽が存在しない理由です。ですから古人はその治法において、心を養う際に当帰の血薬を用い、腎を補う際に附子の陽剤を用います。これはすべてこの理によるものです。



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