第十章 人参黄耆の論
第三節 黄耆の製法




門人がまた聞いて言いました。黄耆の製法は古来、蜜水に浸して炙りますけれども、この方法は正しいのでしょうか。

答えて言いました。私は雲間の李中梓(りちゅうし)〔訳注:李士材:一五八八年~一六五五年〕の《本草通言》を読んで始めて、黄耆の真の製法を得ることができました。

黄耆は手の太陰肺の本薬で、衛気を補い表を固める主薬です。けれどもその味は厚くその性は遅渋なため、軽く浮いて表達〔訳注:表に到達すること〕を得難いのです。このため黄耆が防風を得ると、その効能がいよいよ大きくなるとされているわけです。これは防風の力を借りることによって、表達を得ることができるためです。

黄耆を蜜水に浸すと、その性はますます重く渋り、さらに表達を得にくくなります。そもそも蜜の味は甘く厚く重く、黄耆はこれを得てますます甘くますます重くなって表達を得にくくなるので、さらに胸膈に泥【原注:とら】われてしまうこととなります。

そこで李士材は「古人が黄耆を製した際には蜜炙(みつしゃ)を多用していましたが、愚〔訳注:私〕はそれに()えて酒炙(しゅしゃ)を用います。そうすると表達を助け滞泥をめぐらすことができます」と述べているわけです。これが実に真法です。黄耆を酒に浸して炙ると、酒の力を借りて表達することができます。また酒の陽発を借りますので、遅渋滞泥することがありません。

私はこの制〔訳注:黄耆の製法〕を得て後、黄耆による滞泥の患がなくなりました。



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