第十一章 診脉
第三節 胃の気




診脉の道はただ胃の気を候うところにあります。病の軽重や死生の候は胃の気の上にあります。これは私の臆見ではありません。《素問》《難経》の諸篇に明らかです。胃の気とは何でしょうか。これは人々の後天の元気です。この気が盛んであれば無病とし、病んだとしても軽いとします。この気が少ないときは病とします。この気が薄いときはその病が重いとします。胃の気がないときは命が絶えます。ですから診脉の道は、胃の気をもって要とします。脉の胃の気は和緩と光沢とにあります。諸脉にこの和緩と光沢とがあるものは胃の気があり、和緩と光沢とを失っているものは胃の気がなく、死病とします。木綿の柔かさがあり、真綿の柔かさがあり、生木の堅さがあり、枯れ木の堅さがあるようなものです。同じ柔らかさの中でも木綿には光沢がありません。同じ堅さの中でも生木には和緩があります。同じ濡脉の中でも同じ実脉の中でも和緩光沢の有無を用いて病の軽重や死生を決するわけです。



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