『難経』は仏教の身体観を包含していた
―『難経』における身体観の量的分析
【考察】仏教に基づいた身体観の大いなる飛躍が『難経』の特徴
この臍下丹田を中心とした仏教の身体観は、腎―命門―腎間の動気の位置づけを明らかにし(三十六難・六十六難)、下焦から衛気が発生するという発想を呼び起こし(三十六難)、三焦論につながり(三十一難、六十六難)、さらには任督衝を一源三岐とする奇経の把握方法(二十七難、二十八難、二十九難)につながっていきます。
このように考えると、身体観の仏教に基づいた大いなる飛躍こそ、実は『難経』を特徴付けているものであると言えるでしょう。
そしてその仏教に基づいた身体観とは、腎間の動気―臍下丹田を中心とした気一元の身体観であるわけです。
【目的】『難経』の身体観の量的分析
【背景】『難経』には仏教と讖緯説という新たな身体観が包含されている
【方法】難経脉診における身体観の量的な比較
【実際】詳細は附録資料を参照のこと
【結果】黄老道の身体観を中心とし、仏教の身体観をも多く取り入れている
【考察】仏教に基づいた身体観の大いなる飛躍が『難経』の特徴
【派生的考察】『難経』が開いた仏教の身体観は日本で開花した
【用語解説】黄老道・讖緯説・仏教
注
注1:『道家思想の起源と系譜』―黄老道の成立を中心として―
注2:魏書 釈老志
注3:後漢書 巻四十二 光武十王列伝 楚王英伝
注4:『難経』が書かれた時期は紀元後100年前後
注5:仏教の伝来時期とその身体観:楚王英とその周辺を中心に
注6:左腎右命門を臍下丹田と解するのはなぜか
注7:『不老不死の身体』
参考文献:使用している『難経』の主な版本