井栄兪経合を論ずる 第二




《霊枢・九鍼十二原》に『黄帝が問われた、よろしければ五臓六腑の出る場所を聞きたいのだが。岐伯が答えた。五臓の経脉にはそれぞれ井・栄・兪・経・合の五種の兪穴があり、五×五で二十五の腧穴があります。六腑の経脉には井・栄・兪・原・経・合の六種の兪穴があり、六×六で三十六種の腧穴があります。人体には十二の経脉があり、十五の絡脉があり、合計で二十七の脉気によって全身を循行しています。各々の脉気が出る所を井と言い、流れる所を経と言い、注ぐ所を兪と言い、行く所を経と言い、入る所を合と言います。このように二十七の脉気は全て五兪に流注しています。』







ある人が私に聞いた。「井・栄・兪・経・合の五種それぞれが主る病気はなんでしょうか。」







私は《難経・六十八難》に基づいて答えた。「井は心下部が満ちることを主り、栄は身熱することを主り、兪は身体が重く節々が痛むことを主り、経は喘咳し悪寒発熱することを主り、合は逆気して泄することを主る。これが五臓六腑、井・栄・兪・経・合五種それぞれが主る病気です。」と。







謝氏がこれに注釈を加えている。これは五臓の病についてそれぞれその一端をあげて説明しているものである。ここにあげられている以外の病気は類推して考えていけばよい。六腑について語っていないのは、六腑が臓に付属するものだからである、と。







《霊枢・九鍼十二原》に、『五臓に六腑あり、六腑に十二原あり、十二原は四関から出る。四関は五臓を治療する主役となる。五臓に病気があるときは、これを治療するために十二原を用いるべきである。十二原は五臓の三百六十五節の経気が集まる場所であり、五臓に病気があればその反応は十二原に出る。十二原にはそれぞれ属する臓腑がある。そういった原の性質をよく考え、その反応を精確に把えるならば、五臓がどのように病んでいるのか判断することができる。』とある。







《難経・六十六難》に、『肺の原は太淵に出る。心の原は太陵に出る。肝の原は太衝に出る。脾の原は太白に出る。腎の原は太谿に出る。少陰の原は神門に出る。胆の原は丘墟に出る。胃の原は衝陽に出る。膀胱の原は京骨に出る。三焦の原は陽池に出る。大腸の原は合谷に出る。小腸の原は腕骨に出る。五臓六腑に病気がある場合は全てその原を用いて治療すればよい。』とある。







井・栄・兪・経・合や井・栄・兪・原・経・合は、それぞれ主とする経穴が、五臓には五種あり六腑には六種ある。肺は、少商を井とし・魚際を栄とし・太淵を兪とし・経渠を経とし・尺沢を合とする。大腸は、商陽[絶陽]を井とし・二間を栄とし・三間を兪とし・合谷を原とし・陽経を経とし・曲池を合とする。五臓の、肺経と心経はその経脉の終点を井とし、脾経・肝経・腎経はその経脉の起点を井とする。六腑の、膀胱経・胆経・胃経はその経脉の終点を井とし、大腸経・小腸経・三焦経はその経脉の起点を井とする。

太陽少陽併合圖陽明太陰併合圖少陰厥陰併合圖







また《難経・七十四難》に、『春には井穴を刺し、夏には栄穴を刺し、季夏には兪穴を刺し、秋には経穴を刺し、冬には合穴を刺すとはどういう意味でしょうか。その、春に井穴を刺すということは、邪が肝にあることが多いからであり、夏に栄穴を刺すということは、邪が心にあることが多いからであり、季夏に兪穴を刺すということは、邪が脾にあることが多いからであり、秋に経穴を刺すということは、邪が肺にあることが多いからであり、冬に合穴を刺すということは、邪が腎にあることが多いからである。」とある。







個々の病気について刺鍼法が語られているわけではないが、ここから類推し必要に応じて深く考えていけばよいだろう。







一元流
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