虚実を論ずる  第三




医道は虚実に尽きる。鍼刺する場合も虚実をよく弁別していかなければならない。 《素問・宝命全形論篇》に、『人には虚実の症状がある。五虚の症状のものに近付いて瀉法を施してはいけない。五実の症状のものから遠ざかり瀉法を避けてはいけない。』とある。







弟子が聞いた、「五虚とはどのような状態のことを言うのでしょうか。」

私は答えた、「《素問・玉機真蔵論篇》に、脉が細で・皮膚が冷え・気が少なく・下痢し・飲食することができないものを五虚と言う、とあり、近付いて瀉法を施してはいけないというのは、鍼を刺してはいけないということである。」







弟子が聞いた、「五実とはどのような状態のことを言うのでしょうか。」

私は答えた、「《素問・玉機真蔵論篇》に、脉が盛んで・皮膚が熱し・腹が脹り・大小便が通じ難く・ボーッとしているものを五実と言う、とある。遠ざかり瀉法を避けてはいけないというのは、鍼を用いると、瀉法は行ない易いが補法は行ない難いためにこのように言っているのである。」







要穴を精確に弁別して用い、補瀉の手法を的確に行ない、虚実を総綱として治療していくならば、千変万化の症状を現わす病変も、必ず治っていくものである。







一元流
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