あとがき





これまでの私の臨床経験と、古典の勉強の成果をここにまとめました。

中医学には非常に世話になっているわけですけれども、その中心は私の場合は、次々に出版される古典の簡体字版でした。日本で出版されているものを集めたら大変な金額になったことでしょうし、また、日本語に訳された場合には、あまりに厖大な量となって、空間的にも収まりきれない状態となったことでしょう。そのような貴重な資料を安価に提供してくれた中医学界には、感謝をしてしすぎることはありません。

ただ、現代中医学における教育の場で提供されている中医学は、理論の基本的な骨格がしっかりしていないために多くの矛盾を生じ、まさに学者の頭を寄せ集めて教育のために作り上げたのだなとわかるような代物になってしまっています。

そのため、ここに、気一元の観点からそれを整理しなおし、提供することにした次第です。







東洋医学の優れている点は、生きて動いている人間を丸ごとひとつの生命体として把え、その生命の動きをそのまま診断と治療に応用していった点であると思います。

時代が下って、症状に追われるようになると、この一元の観点がだんだん忘れ去られて、現代中医学に見られるような分析的な瑣末な理論が横行してくることになりました。

その状況に対して、言葉ではなく人間把握の方法そのものとして古典に帰ることを実践するために、この書物を著しました。







読む人が読めばここには、名人芸を駆使するための土台が、しっかりと築かれていることがわかるでしょう。治療家自身がしっかり把握することのできる情報だけを組み立てて、責任ある臨床を行なっていくための基礎がここにあります。それを積み重ねていけば、必ずや治療家として名を成すことができるでしょう。

日本の経絡治療関係の流派とも異なり、中医学とも異なりますので、ここにその名称を、一元流鍼灸術と名づけました。新しい名称ではありますが、これはただ古典に帰れという柳谷素霊の言葉に共鳴してつけられているものであるということを記して、あとがきといたします。


平成16年3月18日        伴 尚志










一元流