治療指針:生活提言


低血糖・生理不順・不妊の弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



赤ちゃんを希望なさっているご本人の主訴は、生理不順であり、イライラ不安など精神的な不調と強く連動している。主訴は20代初めのころより、続いており、精神的に緊張すると生理がおくれる、生理の量自体も少なくなるという状態である。しかしながら、ホルモン治療を受けると生理もくるし、生理の血量も戻り、31歳の時には妊娠をしている。

つまり、子宮を中心とした任衝脉は、肝気の問題に直接的に大きく左右される状態ではありながらも、精神的な影響がない状態ならば、それなりの器を保ち継続できる状態であり、この31歳の流産後、低血糖の頻度が非常にあがってしまうが、生理自体は生理不順もなく順調にきている。







低血糖の症状は、食後三時間でお腹がすいてきてしまい、すいてきたと思うと手から力が抜けて、 しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、ドキドキして情緒不安定になるということである。

食後三時間でお腹がすいてきたという感覚は、胃に熱が生じ始めているということである。

生理的な範囲であれば、空腹を感じても、全身状態の変化とまではいたらないはずである。

胃熱が生じるとすぐに手から力が抜け、しばらくすると手が震えるということは、胃熱を生じ生命力が胃腸に集まると逆に末端では気が薄くなってしまい力が抜け、そして今度は薄くなってしまった気を補うため手先に気が急に集まり震え汗ばんでしまうという状況になっている。また身体の中心に生じた胃熱は心をつきドキドキとさせている。

これらは、空腹で胃熱が生じるという当たり前の生命力のありようを、脾胃の場だけで受け止めることができず、上半身を中心に大きな気の動きを伴いながら経過するということである。胃熱が納まるように食べ物をお腹にいれれば、症状は治まるが、場合によっては、また大きな全身の気の動きを伴い、ご本人を不安にさせ情緒不安定にさせているのであろう。

この状況は、18歳ぐらいから頻度は少ないもののはじまり、31歳の流産後より、頻度が高くなっている。もともと身体の芯から冷えているというような腎が陽気を中心に不足しがちな素体であり、精神的な影響が生理の状況に直結するというような肝の陰陽ともに器の小ささも感じさせる素体である。不安定ながらも、それなりの器の大きさをもっていた腎気が、流産によりひとつ生命力をおとしたことによって、支えとしての力を失い、低血糖の症状を強くしたと考えられる。







食事療法により、カフェイン、炭水化物の摂取をやめ、玄米に代え、タンパク質を積極的にとることにより、食事をして三時間ほどたったときに一気におこっていた胃熱から始まる全身症状はおこらなくなった。しなしながら腹脹がきつくなり、残便感がひどくなるなどの問題は却って出現し食事療法により脾気が落ちていることは明瞭である。

つまり、この食事療法は胃熱を生じさせにくい食事であるために、胃熱から始まる症状は改善した。しかしながら、便が残便感を伴い、腹脹の問題はきつくなるというように、明瞭に脾気には負担がかかってるものであると考えられる。便通がよくついているのは、胃熱を起こさないと言うこと自体が、冷えの問題となり、冷えくだしの様な状態で便通がついている可能性が考えられる。

脾気の負担が明瞭で存る以上、この脾気への負担が長期的に続けば、受け止める器としての腎気がさらに小さくなる可能性がある。







冷えの問題は、幼少期より手・足・腰が冷えていたというように、素体として強い腎の陽虚を思わせる冷え方である。ご本人は、10キロマラソンを目指す運動により、手足の冷えが改善され、体力がついたと考えている。しかしながらその運動は、汗をかき、汗がひいたら、体が冷たく氷のように冷えた、よくお腹をこわしていたということから、腎気を養い、陽気を養っていくこにより、身体そのものが養われたことにより体力がついたのではなく、非常に強い運動で強制的に発汗を促し、全身の陽気が一時的に奪われてしまうような状態を作りながら体表で発汗をし肝鬱を晴らしていたのではないかと考えられる。

平素からある強い肝鬱は腎気へ大きな負担となっており、ご本人の日常に大きな負荷となっていたのではないかと考えられる。

その結果、運動で身体を養うことはできなかったけれども、強制的な発汗を伴う運動が強い肝鬱を張らすことになり、肝気の腎気への影響がある程度軽くなったと思われる。そして気血の巡りがよくなり、ご本人が手足末端の冷えが少なくなったと感じたり、対人関係や仕事のときなどに生じる強い肝鬱を弱め、全身への負担が軽くなり、翌日などの疲れが軽減したと感じることとなったと考えられる。それほどまでに肝鬱が強かったということである。







肝の相火、舌に戦、目窓熱感、神門の張れと明瞭な肝鬱。中脘奥、臍、左陽池冷えなど陽虚を思わせる状態が体表からみえるうえに、舌に歯痕、両列缺のかげりなど全身の気虚も明瞭である。

全体として気虚の素体の中、肝鬱は熱をもつほどであるのに、脾胃には明瞭な冷えが存在しているということである。また、手足の三里公孫など脾胃への影響が少なからずみられる。

現在の食事療法が脾気を落としていると考えられるので、中脘奥、臍、左陽池の冷えは食事療法から生じている可能性と、もともとの腎の陽虚気味の素体からの可能性がある。

背部兪穴をみると、脾胃の経穴は意外に平である。この平の状況は生命力の不足のため経穴の反応が出ていないのか、他の臓腑に比べて良い状況なのかは現時点で判断が難しい。

しかしながら左腎兪を中心として三焦兪、大腸兪と陥凹が続き復溜も冷えがあり腎気の弱さは明瞭であることを物語っている。また風門に発汗肺兪の発汗陥凹から風邪の内陥の可能性も考えられ、腎の陽気不足と肝鬱をより強くしている可能性も考えられる。







肝鬱が運動によりコントロールされたことと、精神的な負担がなかったことにより、この2年は生理そのものの周期が狂うことはなく、また現時点での1時間程度の歩行という運動は脾気そのものを助けている可能性も考えられる。しかしながら、流産後に落ちてしまった腎気を養い補うことはできなかったため低血糖の症状がきつくなり、妊娠にいたることができずにいるのだと思われる。また、風邪の内陥が肝鬱、腎の陽気不足へ負担をかけている可能性もある。




弁証論治



弁証:
風邪の内陥
腎の陽虚を中心とした腎虚
脾虚
論治:
疏風散寒
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