治療指針:生活提言


背中の張り左腰の筋肉の凝り、不眠の弁証論治
病因病理:弁証論治



病因病理



主訴である背中の張りや左腰の筋肉痛が出現したのは18歳の時。成長し、腎気 が充実してくるこの時期に腰に痛みを感じ始めるということは、先天の器、すな わち腎の器が小さいのではと推測する。腎の器が小さいため、常に生活するため に肝気を張る必要がある。肝気が立ちやすく、気逆を起こしたり肝鬱になりやす い素体と考えられる。

子どもの頃から通じが2、3日に1回と少ないままであるが、飲食した量を受け 止め体重を増やすことができるので、脾胃はそれなりにしっかりしていると考え られる。しかし、肝気が立ちやすい素体であるためこれが横逆し脾胃に影響を与 えている可能性がある。

また、PMS(月経前症候群)は、腎の器が小さいゆえに、子宮の中に気血(生命 力) を集めるために身体が無理をしなければならず、肝気の力を借りて頑張っている 状態で、肝気を張っていることによって症状が出ていると考えられる。

生理とは子宮の中に集められた気血(生命力)を古いものとして排泄するという 生命力を使った大きな新陳代謝である。腎の器が小さいために、古い気血を濁気 として排泄するときに清濁の分理がうまくいかず、生命力までもが濁気といっし ょ に排泄されてしまっている状態と考えられる。濁気を排泄しなければいけないが、 そうすると生命力が失われる。この、生命力を失うまいと頑張る体と濁気を排泄 しようとする作用とのせめぎあいにより、寝込むほどのきつい生理痛が起きてし まうと考えられる。







18歳で進学のため知らない土地で一人暮らしを始めたことは、ご本人にとって 器の範囲を超えて生活することであり、肝気をこれまでより強く張らなければな らず腎気を損傷したと考えられる。暖房がコタツのみで寒かったということも腎 気に負担をかけた。

このため主訴の背中の張り、左腰の痛みが出現し始めた。

卒業後実家に戻り就職。

24歳頃からタバコを吸い酒量が増えた。週末は朝までタバコを吸い酒を飲みな がらゲームをして肝鬱を発散させていた。腎気にはこれらは負担となっていたが、 年齢も若かったためまだそれほど影響は表れていない。 この頃は体温が低く手足も冷えていた。陽虚に傾いていたようだ。

酒量の増加によって、22歳で48kgだった体重が27歳には57kgになる。 1年かけて運動で肝気を発散することによって体重を戻した。







29歳で結婚したがしばらく別居。30歳で北陸から埼玉に移動し夫と同居する。 気候の違い、慣れない土地での生活や仕事など、またしてもご本人の器の範囲を 超えた生活になり、肝気を張り腎気を損傷してしまう。腎気を損傷したことでさ らに肝気を張らなければならず、肝鬱と腎気損傷の悪循環に陥っていく。

この時は年齢も少し上がっていたので、腎気落ちがきつくなり腰痛で1カ月入院 してしまった。

体重は動かなかったせいもあるが55kgになっている。腎気落ちにより排泄機 能が落ちてしまったことも考えられる。

この頃から風邪を引きやすくなったとのことだが、これまでタバコで肺気を傷め ていたことや乾燥している気候も影響あるが、それだけ腎気落ちがきつくなった とも考えられる。







その後、35歳8月、夫の転勤で滋賀県に移動した。ここでもまた肝鬱腎気損傷 の悪循環が続き、腰痛も続いている。

腎気が落ちたことにより気逆がきつくなり、タバコで肺気を傷めていたこと、防 風通聖散で少し排泄されたが、これまでに溜めた内湿も加わって気管支喘息が起 きてしまった。

37歳夏、それまでも職場であった派遣イジメが先輩の退職をきっかけにひどく なった。職場で今まで以上に強く肝気を張り続け、腎気をさらに傷めつけた。こ のため腰痛も強くなり、月に2回ブロック注射をしないと我慢できなかった。

家に帰って肝気を強く張る必要がなくなると、気が散じ意気消沈して涙が止まら なくなってしまった。

この職場は12月に退職したが、38歳5月からの職場はデスクワークで残業が 多く、体も疲れるが仕事上の悩みもあり精神的にも肉体的にも腎気に悪影響を及 ぼし、これまですでにきつく傷めつけられていた腎気はさらに損傷が進み、肝腎 同源で肝陰の不足となり、肝陽をおさめることができず不眠を誘発してしまった。







39歳、タバコをやめた。代わりに間食で肝鬱を発散するようになり太り始めた。

41歳の時、夫の転勤で再び埼玉に移動。薬剤の影響で食欲が増し太り始めるが、 43歳で痛みがなくなったわけではないが、腰のリハビリをしなくても大丈夫に なった。薬剤の影響もあるが、傷めていた腎気が無理をしないことによって少し だけ回復したのだと思われる。

ただし、腎気落ちはきつく、また年齢的にも腎気が落ちてくる時期であり、器の 範囲を超えない生活で回復を待つことが必要と思われる。

46歳の頃は、体温が37度前後になり、暑く感じるようになった。

切診当時も暑かったようだが、関元や大巨は奥に冷えがあり、腎気落ちがきつい ため表面に熱が浮いている状態ではないかと考えられる。

48歳3月に新しい職場で緊張し、少し無理をしたようだ。

肝気が上衝することにより肺気のめぐりが悪くなり結果的に風邪を引いたり、肝 気が横逆し脾胃を傷めお腹を壊したりした。

退職後も38度の発熱が続くなど、少しでも器の範囲を超えると大きなダメージ が出やすくなっている。

体重が増え内湿が溜まっているため、外気の影響を受け梅雨時は頭痛や関節痛が 起きる。便器に大便が付着して取れがたいようなことがないとのことで、この情 報では内湿は否定されているが、腎気が落ちがかなりきつく内湿を排泄できずに いるからとも考えられる。反対に生命力の虚損がきついため、清濁の分理がうま くできず濁気として内湿を排泄しようとすると生命力も一緒に失われてしまうの で、排泄しないことによって生命力を守ろうとしているとも考えられる。




弁証論治



弁証:腎虚肝鬱

論治:補腎、疏肝理気







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











一元流
しゃんてぃ治療院