長沙腹診考

少腹満敦状


敦状とは、少腹を按ずると、覆杯のようなものがあるものです。この症の多くは小便がしにくく、経行不順があるものです。牡丹皮湯と混同しないようにしてください。『礼記』の〈明堂位〉における、有虞氏の両敦 夏后氏の四璉(れん) 殷の六瑚(こ) 周の八簋(き)は、註にすべて黍稷〔訳注:しょしょく:五穀〕をもる器のこととあります。〔訳注:敦とは〕これのことです。

私はこのため仲景の処方は三代以上の遺方であると理解しています。どうしてかというと、張氏の往古の遺方の書に、敦状と譬えられていたため、張氏もやはりそのまま書いたのではないかと考えているからです。

東洞翁の論に、柴胡加竜骨牡蛎湯は古方ではなく、しかし唐以降の処方でもない、と述べられています。方意を考えるときにはその〔訳注:処方が作られた〕時代も明確に理解しておくべきでしょう。


付言

同郷の三十才余りの寡婦が、少腹満で敦状のようでした。数ヶ月も月経がなく、耐え難い痛みがありました。大黄甘遂湯を与えたところ、一剤で治りました。

野州の今市の婦人、咳嗽が出るごとに少腹に響き、小便も失禁するような状態でした。私が診ると、敦状のようなものがあります。前方を用いて治しました。

ある病者、大小便ともに秘閉して死にそうでしたが、私は前方を用いて治しました。



一元流
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