月経に関する病の弁病弁証





月経に関する病とは、月経周期・経期〔訳注:月経の時期・期間〕 ・経血量の異常・経血の色の異常・経血の質の異常・非生理的な月経の終 息・月経周期に付随する異常・絶経前後に現われる関連病症等の一連の病 のことを言います。

月経周期の異常には、月経先期・月経後期・月経先後不定期があり ます。経期の異常は、経期が長引くものがあげられます。経血量の異常は、 月経過多と月経過少とが主となります。月経周期・経期・経血の量の異常 が重なって表われているものに、崩漏があります。非生理的な月経の終息 には閉経〔訳注:月経の停止〕があります。月経周期に付随する病症とし ては、月経前後に起こる諸症状、経行吐衄〔訳注:鼻血〕・痛経がありま す。絶経前後に現われる病証とは、月経が生理的に終息する前後の諸症状 のことを指します。







月経に関する病は血証を主とし、出血の時期・量・色・質において 異常な点が現われます。ですから、月経に関する病の弁証のポイントは、 月経の時期・量・色・質・気味・および下腹部の脹満や疼痛ということに なります。


経期:一般的な周期より短くなる場合は、血熱あるいは気 虚が多くなります。月経周期が延びる場合は、血虚や血寒が多く なります。月経周期が先後不定期〔訳注:不規則〕の場合であれ ば、肝郁あるいは腎虚が多くなります。月経期間が長引くものは、 気虚や血熱が多くなります。月経期間が短くなるものは、血虚や 虚寒が多くなります。

経血の量:血量が多い場合は、血熱あるいは気虚が多くなります。量が 少ないものは、血虚あるいは血寒が多くなります。

経血の色:色が鮮やかであったり紫紅のものは熱に属し実に属します。 暗紅のものは寒に属し、淡紅のものは虚に属し、暗淡ですすけた 水のような状態のものは虚寒に属します。

経血の質:粘稠なものは熱に属し実に属します。清稀なものは虚寒に属 します。瘀塊のあるものは瘀血です。

経血の気味:臭穢なもの〔訳注:嫌な臭いのするもの〕は熱が多く、無 臭のものは寒が多く、悪臭〔訳注:とても嫌な臭い〕がひどくて で嗅ぐこともできないほどのものは瘀血に属し、濁気に 敗られている症状を表わし、多くは非常に危険な状態です。経血 が崩下したり〔訳注:どっと下ったり〕漏下するものの多くは虚 に属しますが、熱に属したり瘀に属したりすることもあ ります。


月経先期〔訳注:月経周期が短いもの〕を例にとってみましょう。 月経先期に月経期間の延長・経血量の過多・経血の色の紅あるいは紫・粘 稠な質・穢臭・下腹部の腹脹を兼ねているものは、血熱気滞とします。も し経血の量が多く・色が淡く・質がすんでいて・下腹部が空虚なものは、 気虚とします。もし経血の量が正常あるいは少なく・はっきりした紫色で ・質は粘稠・腹部が痛まないものは、陰虚血熱とします。







月経時期にともなって起こる症状には、腹痛・吐衄・乳脹・頭痛・ 失眠・泄瀉・水腫・口の糜爛・風邪ひき・風疹塊・心煩して休まらないと いったものがあります。

経期腹痛:喜按のものは虚とし、拒按のものは実とします。温めると痛 みが減るもは寒とし、温めるとかえって痛みが増加するものは熱 とします。痛みが月経前あるいはその最中におこるものの多くは 実と考え、月経後に痛みが起こるものの多くは虚と考えます。平 常の時にも下腹部に痛みがあり、それが月経が起こることによっ て激しくなるものの多くは、湿熱の欝結によるものか、気血の 瘀滞によるものです。月経になると下腹部が脹満して緩 まないものの多くは気滞に属します。

経期鼻衄:この多くは気逆・血熱に属します。

経前乳脹:この多くは肝郁気滞に属します。

泄瀉・水腫・薄白苔・胖嫩舌:この多くは脾腎の陽虚に属します。

頭痛・失眠・口の糜爛:この多くは血虚による胃熱に属します。

風疹塊:この多くは血虚による乾燥に属します。

心煩して休まらない:この多くは血虚によって〔訳注:心神を?〕養 うことができないものに属します。

月経が起こるたびに風邪を引く:この多くは血虚して衛陽がしっかりし ないものなどに属します。

絶経前後に症状が出る:この多くは腎陰の虚損に属します。









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