産後の下痢の病因病理






総論



産後に発生する泄瀉は、分娩以降、臓腑の機能がまだ回復しきって おらず、中でも脾気の虚弱がその中心となっていることを示しています。 そのような状態でさらに、飲食や外邪によって傷られて、脾陽がその運化 機能を失調し、清濁を分かつことができなくなり、水湿を化すことができ なくなったため、積滞が下に腸に注ぎ、その伝化機能を失調せしめて、産 後泄瀉を形成していくことになるわけです。また、腎虚が脾におよんで、 脾腎同病によって泄瀉となる場合もあります。病因に関してはこのように いろいろありますが、すべて脾胃の機能障害および湿盛が、この病に関係 しています。




脾虚



ともと脾虚のあるものが、出産前の泄瀉が治りきらずに、出産に よる疲れによってさらに気が消耗して、脾胃がますます虚し、その運化機 能をさらに失調し、水穀を腐熟し難くなったため、水が停滞して湿となり、 穀が貯まって積滞となり、湿濁が下陥したことによって、産後泄瀉となっ て現われたものです。




寒湿



もともと脾虚のものが、出産によって傷られて臓腑が動じ、脾気が ますます虚し、さらに寒邪を受けて、脾陽がさらに傷られて、水穀を腐熟 し運化することができなくなり、寒湿が内に盛んになり、下に腸に走って 産後泄瀉として現われたものです。




湿熱



夏や秋に出産し、暑湿や湿熱を受けて、腸胃が傷られたり、脾虚に よって湿を生じ、湿邪が欝滞して熱に化し、火熱が内に迫って、湿邪が下 に腸に走り、産後泄瀉として現われたものです。




食滞



産後、臓腑の気と血とがともに虚している時期に、暴飲暴食したり、 ほしいままに甘いものや油こいものを食べて腸胃の機能をさらに障害した り、なま物や冷たい物や不衛生なものを食べて、脾胃の機能を失調し、脾 胃の運化機能と腐熟機能が損傷されたために、水穀が混じりあって産後泄 瀉となって現われたものです。




腎虚



もともと腎が虚しているものが、出産によってその元気がさらに消耗 して腎陽がますます虚したものです。あるいは、脾虚による泄瀉が長引き、 腎精が不足して、精気ともに虚弱となり、腎が虚して命門の火が衰え、開闔 の力が弱まり、水を制することができなくなったものです。まらあるいは、 火〔訳注:命門の火:腎陽〕が衰えたことによって土〔訳注:脾〕を温める ことができなくなり、脾がその運化機能を失調し、水穀を化すことができな くなり、下に腸に注いで産後泄瀉として現われたものです。









一元流
婦人科学 前ページ 次ページ