乳癰〔訳注:乳腺炎〕




乳房が紅く脹れて熱して痛み、甚だしい場合は化膿して潰瘍のよう な状態となり、悪寒や発熱を伴うものを、「乳癰」と呼んでいます。







乳癰〔訳注:乳腺炎〕はその発生状況によって発病原因が異なっています。ここで は三つの時期に分けておきます。哺乳期に発生するものを、「外吸乳癰」 と呼んでいます。妊娠中に発生するものを、「内吸乳癰」と呼んでいます。 老若男女を問わず、妊娠や哺乳とは無関係に発生するものを、「不乳児乳 癰」と呼んでいます。

この中で、「外吸乳癰」がもっともよく見られるもので、出産後3 ~4週間までにこの症状が現われます。この時期におこる乳癰は、産褥期 と密接な関係にありますので、ここで考えていく問題となります。乳癰の 初期には、自然に消えることもあり、また膿が出てきれいになって、徐々 に治っていくこともあります。けれどももし排膿がうまくいかない場合、 その膿液が他の乳絡に波及して、「伝嚢乳癰」を形成したり、潰瘍が破れ て膿が乳管に侵入し、膿液が乳頭から流れ出たり、乳汁が傷口から流れ出 て「乳漏」の状態となったりして、なかなか傷が治らなくなる場合もあり ます。









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