体幹部と四肢との陰陽関係は、幹と枝葉と置き換えて考えます。この考え方を敷衍させると、臓腑が根ということになりましょう。
体幹部はより裏に近く、根に近くなります。根に近いということは、外に風が吹いていても、枝と比べるとその影響を受けにくいということになります。根である支点に近いわけですから、ぶれの幅が少なく、ここを調整すると、外に向かっては枝葉を大きく動かすことができ、内に向かっては裏を立て支点を充実させることによって全身の安定感を増加させることができます。
四肢は枝葉です。枝葉は、外に風が吹いているとその影響をよく受けます。外に向かっては気をより大きく動かし発散させることができ、内に向かっては停滞している状況を動かすことができます。
双方とも、選穴能力と鍼を施術する力によって、その気の動く範囲が決まります。少しの枝葉しか揺らすことができなかったり、根の一部を叩く程度の影響しかもてなかったりするわけです。
杉山流三部書には、腹部と四肢とを対照させていて、『腹部のみに刺鍼して四肢には鍼を刺す必要はないという説などは、まさに井の中の蛙大海を知らざるの類にすぎない。』と警句を述べています。
これは、病むという場合には、全身が病んでいることが多く、腹部のみの問題であったり四肢のみの問題であったりすることは意外と少ないということを意味しています。
弁証論治をする上で、局所的な愁訴であっても、全身の状況と関係しているかどうかということを常に問うのは、この理由によります。
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