奇経八脉の治法




【原注: 奇経八脉の治法のうち、湯薬によるものは、病にしたがって寒熱の補瀉を適切に用いればよいので、処方を事前に定めることはできません。鍼灸の治法については、主治する兪穴を兼ね定めれば、治法を事前に知ることができます。

これまでにすでに、それぞれの項目ごとに主治穴をあげていますけれども、條文の間に埋もれてしまい、いざ治療というときに、急には探しにくいと思いますので、贅述であることはお許し頂いて、ここに主治の要穴を集め、後学の参考に供したいと思います。 】




長強【原注:脊骨の下端、谷道の上にあります。一名、亀の尾】一穴【原注:鍼三分・灸五壮】。督脉の病を主ります。強直(こわばりすくみ)反張(そりかへる)・腰脊寒痛・癲癇・狂越・痔瘡・頭頂や肛門の諸疾患を治療します。




曲骨【原注:陰毛の際、横骨の上端にあります】一穴【原注:鍼六分、灸七壮~七七壮まで】。任脉の病を主ります。腹内の結積・腹痛・淋閉・疝瘕・心痛・嗌の乾き・帯下・月経が通じない・すべての前後陰の諸疾患を治療します。。




関元【原注:臍下三寸にあります】一穴【原注:鍼八分・妊婦には禁鍼・灸七壮から百壮まで】。任脉の病を主ります。治法はだいたい曲骨と同じです。少腹から臍をめぐり、下に横骨陰中に引いて切痛するものを主ります。




申脉【原注:外踝の下五分の陥中白肉際にあります】二穴【原注:鍼三分・灸二壮】。陽蹻の病を主ります。腰脚の痛み・目の病で内眥から痛みが始まり目をつむることができなくなるもの・昼起こる癲癇・腰が痛んで挙げることができないものなど、外踝より上の一切の諸疾患を治療します。




跗陽【原注:外踝の上三寸にあります】二穴【原注:鍼六分・灸五壮】。陽蹻の病を主ります。癲癇・僵仆・羊鳴・悪風・偏枯・(疒+君/巾)痺し身体が強ばるといった、外踝より上の一切の諸疾患を治療します。




僕参【原注:跟骨の下の陥中にあり、足を拱いてこれを得ます】二穴【原注:鍼三分・灸七壮】。陽蹻を治療する際には並んで僕参を兼ねて取るとよろしい。




交信【原注:内踝の上、少陰の前、太陰の後の筋骨の間にあります】二穴【原注:鍼四分・灸三壮】。陰蹻の病を主ります。少腹の痛みが陰中に連なって痛み、男子は陰疝、女子は漏血、夜起こる癲癇、目の中が赤くて内眥から痛みが始まるもの、腰が痛み、その痛みが(むね)に引くもの、目が(目梳-木)々(こうこう)として【原注:ハッキリ見えず】、甚だしいときは反折し・舌が巻き話すことができないもの・および目を病んで、目を閉じてしまって見ることのできないものといった、内踝より上の一切の諸疾患を治療します。




照海【原注:内踝の下、五分にあります】二穴【原注:鍼三分灸二壮】。陰蹻を治療する際には照海をともに兼ねて取ります。



【原注: 張潔古は。

陰蹻の病は、陰が急となり、陰が厥し、脛直、五絡が通じず、表は和し、裏は病んでいます。陽蹻の病は、陽が急となり、狂走して、目が昧くはなく、表は病み、裏は和しています。陰が病めば熱します、照海・陽陵泉に灸します。陽が病めば寒します、風池・風府に鍼します。

陽陵泉二穴:膝下一寸、(骨行)の外廉の陥中:鍼六分・灸七壮

風池二穴:耳後の髪際の陥中:鍼七分・灸七十壮

風府一穴:後髪際に入ること一寸にあります:鍼三分・禁灸

癲癇の、昼発するものは申脉に灸し、夜発するものは交信に灸します。

と述べています。 】




金門【原注:外踝の下、少し前にあります】二穴【原注:鍼一分・灸三壮】。陽維の病を主ります。身体が溶々として自ら収持することができないもの・寒熱往来・転筋・脇痛・癲癇を治療します。




陽交【原注:外踝の上、七寸にあります】二穴【原注:鍼六分・灸三壮】。陽維を治療する際には陽交をともに兼ねて取ります。




築賓【原注:内踝の上五寸、腨分の中にあります】二穴【原注:鍼三分・灸三壮】。陰維の病を主ります。悵然として志を失い、心痛・小腹痛・脇下支満・陰中痛・転筋・癲癇・腰痛で痛みが怫怫然として甚だしければ悲しみ恐れるものを主ります。




気衝【原注:陰毛中の両傍、動脉の宛々たる中】二穴【原注:鍼三分あるいは禁鍼とも言われています・灸七壮】。衝脉の病を主ります。気逆して裏急・陰痿・陰痛・心腹痛・月水不利・臍の周辺に動悸があって痛むもの・常にその身の大きいことを想い怫怫然としてその病むところを知らないもの・常にその身の小さいことを想って狭然としてその病むところを知らないもの・痿痺・諸々の逆・上衝の病を主ります。




関元【原注:臍下三寸にあります】一穴【原注:鍼八分・妊婦には禁鍼・灸七壮から百壮まで】。




天枢【原注:臍の傍ら二寸】二穴【原注:鍼五分・灸五壮または二十壮】。衝脉の病を治療する際には関元・天枢をともに兼ねて取ります。




帯脉【原注:章門の下一寸八分にあります】二穴【原注:鍼六分・灸五壮】。帯脉の病を主ります。腹満・腰が溶々として水中に座っているような状態・腰腹が縦み溶々として嚢水の形の状態のようなもの・婦人の小腹が痛み裏急・後重・瘈瘲・生理不順・赤白帯下を主ります。【原注:《明堂》には、鍼六分・灸七壮と述べられています】




章門【原注:季肋の骨端にあります】二穴【原注:鍼六分・灸三壮から百壮】。帯脉の病を治療する際には章門をともに兼ねて取ります。



【原注:以上の病名、病因についての詳しい注は、前の八脉のそれぞれの條文の下に述べられています。】










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