第 九 難

第九難




九難に曰く。どのようにすれば臓腑の病を区別して知ることができるのでしょうか。


第一難で五臓六腑の吉凶を決すると語っていますが、まだ臓腑を区別して診察する方法を明確にはしていません。この難でやっと区別して表わしています。






然なり。数は腑で、遅は臓です。数は熱とし、遅は寒とします。諸陽を熱とし、諸陰を寒とします。


数とは、脉動が速いものを言います。遅とは、脉動が緩やかなものを言います。六腑は陽に属し、陽は熱とし、熱は血脉の流行が疾速なものですから、数脉を表わします。五臓は陰に属し、陰は寒とし、寒は血脉の流行が遅滞なものですから、遅脉を表わします。しかし後学〔訳注:後世の学者〕が寒熱という言葉に拘わって臓は冷えて熱することがなく、腑は熱して冷えることはないと決めつけることを恐れて、扁鵲自ら解説を附して、諸陽を熱とし諸陰を寒としますと語っています。腑もまた諸陽に属しますから熱としますが、もしその腑に陰寒があるときは寒とします。臓もまた諸陰に属しますが、もしその臓に陽熱があれば熱とします。決めつけて論じないように注意する必要があります。腑病に熱があり臓病に寒があるのは常〔訳注:一般的な状態〕です。腑病に寒があり臓病に熱があるのは変〔訳注:一般的ではない状態〕です。ですから外邪陽熱等の腑病であるのに遅脉があれば嫌な徴候であるとし、内傷陰寒の臓病であるのに数脉があれば嫌な徴候であると考えるのです。


問いて曰く。寒熱の原因は何なのでしょうか。

答えて曰く。正気が不足するときは寒し、邪気が有余するときは熱します。臓病の多くは不足の病ですから寒し、腑病の多くは有余の病ですから熱します。臓が熱するものは陰虚して陽熱を制することができないもので、腑が寒するものは陽虚して陰寒を制することができないものです。ともに危険な徴候であると考えます。






このようにして臓腑の病を区別して知るのです。


腑は陽に属しますので陽脉を呈することから腑病であると理解します。臓は陰に属しますので陰脉を呈することから臓病であると理解します。人身の病症を理解するには、臓腑を分けることが非常に大切です。



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