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沢田健が絶賛した東洋医学の基本的書物に「難経鉄鑑」がある。 「難経鉄鑑」は江戸時代中期に広岡蘇仙によって著され、仏教の身体観すなわち「臍下丹田を中心とした気一元の身体観」が『難経』には描かれているということを明らかにした書物である。 広岡蘇仙の示した“身体観”は、支那大陸を代表する張景岳の「景岳全書」、および現代中医学における凌耀星の「難経校注」においても未だ示されていない。 したがって、「難経鉄鑑」における「臍下丹田を中心とした気一元の身体観」は、日本独自の身体観であると言える。 このような日本独自の身体観が生まれた背景には、江戸時代の反知性主義の影響が考えられる。反知性主義とは「知性を捨てて本能に赴く」のではなく、「知性の根拠である言語を疑い、言語を越えた真実の世界に立脚して知性を顧みる」ことである。 沢田健が常々語っていた言葉に、「書物は死物なり。死物の古典を以て生ける人体を読むべし。」がある。我々は、文字の糟粕を超えて患者の身体から、真の古典を読み取る。すなわち、言葉を越えた真実を掴む努力をしなければならないと考える。
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