下焦精蔵 第二節 金生水




腎は骨際から出て骨際に会集し〔訳注:集まり〕ます。これがどうしてかということは地理から理解することができます。地中を流れる水の源は深山にあります。水が始めて発する場所、その流れる場所はことごとく岩窟や金石の(きわ)から出ていることと同じです。たとえば紙を水に浸してその紙の中から水を出そうとするときは、水に浸した紙を手で堅く縮め絞ることによって、紙の中に含まれている水液を紙の間から流れ出させます。また器の中に水を入れて紙をその中に丸め堅めて入れると、器の中の水液がすべて堅めた紙の中に集まります。このように、水が地中に充満しているとしても、土石の堅固な場所でないと、出ることができず流れることもできず集まって溜まることもまたできないものなのです。

同じように腎水も骨の属の澱む場所から出て、また骨の属の澱むところに集まります。脊の十四椎は、上下身体の大関要節(だいかんようせつ)〔訳注:非常に大切な関節〕であり、これより大いなる骨際はありません。ですから腎の水蔵はこの大関節の堅固な骨際に属【原注:つらなり】、父母交接の時にもまた、水精がここから流れて母の子宮に集まり凝ります。その凝る場所の水精はそのまま、その子の腎精となってまた十四椎の大関節に係属していきます。実に腎は骨際の堅固なところから出て、また骨際の堅固なところに集まります。水は金石の堅固なところから出て、また金石の堅固なところに集まるという理と合致します。

また、骨は腎の合であり、諸々の骨にはすべて空隙があります。これを髓と名付けています。髓の中と骨節とは、常に腎の精液を充たしていて、骨を養い屈伸を利し〔訳注:関節の動きをよくし〕ます。このこともまた、水は金石の堅固な場所から出て、その堅固な場所に従って流れ、その堅固な場所に集まって溜まる、という理に合するものです。天地の間において金石ほど堅固なものはありません。天地の水は金石に生まれ、人身の水精は骨際に生じます。ですから諸々の骨が腎水の主であるということが、よく理解できるわけです。



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