下焦精蔵 第二十八節 子宮有(しゅ)




万物の形質というものは、春温を得て生じ、冬寒を得て尽きるものです。その冬季に失って春季に生じる形質は、毎年すべて同じで少しも違いがありません。

思うに、冬季その形が消失してその種もなくなっているならば、来春に生じるものの形もまた異なっているのではないでしょうか。けれども毎春同じ形に生じて変わらないのはどうしてなのでしょうか。







答えて言いました。その種は消尽するとしても、これを生じるところの鑄【原注:いがた】はまだそこにあります。ですからその形が同じで差がないわけです。たとえば、金を溶かして一つの鑄に入れると、何回鑄出(ちゅうしゅつ)してもその形は同じで差がないようなものです。子宮は鑄です。父精は溶かす金汁です。鑄出された形は子です。一滴の父精が母の子宮に入り、鑄出する子宮の鑄に限界があるために、諸婦人が生じるところの人の胎はすべて同じで、その形に差がないわけです。



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