上焦神蔵 第九節 心気肺気




人には神気と形気との二種類がありますから、病においても神気と形気の二症があります。神気は右に弁じたように心に蔵されていて万事の主宰となるものです。形気は心神から出て肺臓に属します。

《素問・生気通天論》に、『陽気というものは天と太陽のようなものです。』と述べられています。日輪〔訳注:太陽〕は陽気の精粋であり、天気は宇宙に遍満している〔訳注:宇宙全体に充満している〕無形の陽気です。太陽は体〔訳注:本体〕であり、天は用〔訳注:機能〕です。人身における神気や形気もまたこのようなものです。全身に遍満して温かいものは形気です。その遍満している陽気の中にあって、至精〔訳注:精妙の極み〕 至粋〔訳注:純粋の極み〕 通明なるもの〔訳注:すべてを通じさせ明らかにするもの〕は神気であり、膻中 心の宮に位置しています。

心神と形気とは、実は体用関係にあって離れることのないものです。けれども治療においては、神気と形気の病症は両端に分かれます。たとえば俗に言う頓死のようなものは、心神の気が絶するものです。また中風となって、半身不随となり言語が不正となりながら、何年も死なないものは形気の病に属し、神気はまだ絶していません。けれども神気と形気とは体用関係にあって離れることがないわけですから、形気の病であってもついには神気が絶することとなり、死んでしまいます。



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