第十七節 蔵象




人身における五蔵とは、肺は気を蔵し、心は神を蔵し、脾は営を蔵し、肝は血を蔵し、腎は精を蔵するということを言います。このことを、まず心があって後に神が蔵され、腎が生じて後に精が蔵される、と多くのものは述べていますが、それは全くの誤りです。

五臓は五神の宮です。五神があって後に五臓の象を生じます。たとえば鳥があって巣を作り、獣があって穴を穿ち、人があって宮室を作ってそれそれその室に舎るようなものです。鳥がなければ巣はなく、獣がなければ穴は穿たれず、人がなければ宮室などないのです。ですから人身の五蔵もまた、五神があって蔵象が生じます。神が生じるので、これを蔵する場所としての心が生じます。気が生じるので、これを舎す場所としての肺臓が生じます。精が生じるので、これを蔵する場所としての腎が生じます。血が生じますので、これを舎す場所としての肝臓が生じます。営が生じるので、これを蔵する場所としての脾臓が生じます。五臓は五神から生じるわけです。

右に弁じたように、神は大陽であり火に属しますので、神から生じた心臓であるがゆえに、その色は赤くて火に似ているのです。気は神陽の中から別れ出た枝であり、その用は陰で少陰ですので、金に属します。気から生じた肺臓であるがゆえに、その色は白くて金に似ているのです。営は上下升降の交気であり、土に属します。この営から生じた脾臓であるがゆえに、黄色で土に似ているのです。精は大陰であり水に属します。その精から生まれた腎臓であるがゆえに、黒色で水に似ているのです。血は精陰の中から別れ出た枝であり、その用は陽で、少陽ですので、木に属します。この血から生じた肝臓であるがゆえに、青色で木に似ているのです。

鳥の巣や獣の穴でも、そのそれぞれが作り穿った鳥獣の形によってその巣穴の象は異なります。これと同じで人の五臓の象や色がそれぞれ異なる理由も、五臓を生じるところの精 神 気 血 営の気によって、それぞれその臓の象や色が異なるわけです。



一元流
医学三蔵弁解 前ページ 次ページ