中焦穀府 第一節 王道覇道




医家には、王道と覇道とがあります。文の道を用いて民を恵み、世を済けて天下を治めるものは王道です。戈戟(かげき)〔訳注:武器〕を用いて世を平らげ民の患いを恐れずにただその勢いに乗じて天下を治めるものは覇道です。医家が病を治療することにおいてもまたこの二道が存在します。

汗吐下の三法を用いて攻撃して治療するものは医の覇道に属します。もっぱら中焦胃の気を愛護して治療するものは医の王道に属します。医者の多くは、「病は邪気の実によるもの」であると考えています。そのため攻撃の道ばかりめぐって、胃の気を養う王道を理解していません。そのため少なからず治療を誤ることとなり、人の天年〔訳注:寿命〕を損なってしまいます。深く謹み恐れなければなりません。



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