第一章 三焦心包有名無形論
第八節 心主三焦は相火の一気




また心主 三焦はともに火に属しますけれども、二つの火ではありません。もともと相火という一つの気です。天地における四季 寒熱 温冷 万物の生長収蔵は、すべて相火の出入往来によるものです。人身における寒温生化もすべて相火の運行によっています。もし相火の運行が疾速すぎる場合には熱を発します。運行が遅渋すぎる場合にもまた熱を発します。その疾速によって熱が出ているものを実熱実火とし、苦寒降沈の薬剤がこれを主ります。その遅渋によって熱が出ているものを虚熱虚火とし、人参 黄耆 桂枝 附子の温補の薬剤がこれを主ります。もし誤ってこれに冷寒の薬剤を用いると、反って光焔が天に達する〔訳注:虚火が上炎する〕こととなります。

病因における虚実寒熱と治療における補瀉温冷とは一つとして形がありません。三焦の相火という一気を本〔訳注:目標〕として〔訳注:治療を組み立てて〕いるだけなのです。このことは、心主 三焦が有形であるとしてできることではありません。

私は《素》《難》を心に刻んで五十余年撰述し、彫刻させてきた〔訳注:版木を彫らせて出版させてきた〕書物は百二十余巻にのぼります。撰してまだ刻んではない書物も若干ありますが、まだ医道の奥旨には達していません。けれども心主三焦の有名無形の問題を知り、この論を述べることとしました。及ばないところは後の君子がふたたび正していただけるようお願いいたします。



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