第二章 腎間動気論
第六節 腎の形




また聞いて言いました。腎臓の形は豇豆(ささげ)のようであり、十四椎の左右に脊を挟んで二臓あると言われているのはその通りなのでしょうか。

答えて言いました。腎は二枚あります。けれどもはっきりと二つの形に別れているわけではありません。腎は北方の坎です。北方には必ず二つの物を配します。ですから腎にもまた二臓あるわけです。けれども、実は一臓で、その形が自然に二つあるようにみえるだけです。陰嚢などは二丸ありますけれども、その外形は一つの嚢で二つの嚢ではありません。両腎もまたこのようなものです。ですから陰嚢を一名外腎と呼んでいます。これは陰嚢が裏腎の表れたもので、その形が似ているためです。愚俗が誤ってその形がはっきり左右に二つ並んでいると考えたために、左腎は陰水 右腎は陽火という間違った説があるわけです。学ぶ者は外腎から裏の腎二臓の形を工夫して〔訳注:考究していって〕ください。

《三十六難》に、『腎が二つあるのは全部が腎なのではありません。左にあるものを腎とし、右にあるものを命門とします。命門は諸精神の舎るところです。男子は精を蔵し、女子は包を繋ぎます。』と述べられています。その気と腎とが相通じているため、臓に六つあると言われています。この前後の文から考えると、腎は二臓のようでありながら一臓であることがわかります。

どうしてかというと、《三十六難》では一臓として五臓の数に配し、《三十九難》では二臓として六臓の数に合わせて、その気と腎とが通じていると述べています。ですから、実は一臓で、二つの形があるようにみえるだけだということがわかるわけです。

学ぶ者は一隅に執滞せずにただ心を尽くしてその書の心に向かえば、理旨をはっきりさせることができます。文字に拘わっていると、その深い理を失ってしまいます。

腎の二枚はこのようになっているはずです。

その色は黒紫です。水中に陽火を含蔵しているため、陰と陽の黒と赤とを兼ねて。黒紫色なのです。



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