はじめに





ここにまとめましたのは、鍼灸医学をどのように把握し、どのような筋道で学習していくかという、基礎の基礎、骨格となる部分です。これを踏まえておけば、初心者でも深く確実に、自分自身の個性に合った鍼灸の道を広げていくことができます。また、すでに経験を積んだ治療家でも、自分が何をやってきたのか整理でき、その経験を未来に向かって生かすことができます。

この書の中では、人を診、施術するための包括的な観点、一元の生命の動きをみていく観点こそが、東洋医学としての鍼灸医学のもっとも基本的な、ゆるぎない観点であるということが、繰り返し述べられています。これは、実際臨床において中核となるものです。これを踏まえて臨床に向かうならば、人間理解はどんどん深まっていき、いつの間にか自分自身の流儀の鍼灸術を、確かな土台の上に作り出すことができるでしょう。

この書物は、一元の観点とはいかなるものかということを解説し、その観点で身体を診、治療を施していくまでの一連の流れをまとめたものです。実際臨床の中で迷い悩んだとき、古典を学んでいる際に迷路にはまり込んだとき、自分は何を学ぼうとしているのかということを明確にする地図としても、この書物は役に立つでしょう。臓腑経絡学は臨床上も非常に重要な部分ですが、この書の中核ではありません。一元の観点からみた身体観を、過不足なくバランスよく把む流れそのもの、その全体観こそが、この書物のもっとも解き明かしたいところです。

この書を通過するならば、さらに詳細な古典を読んでいっても、迷うことはありません。基本的な型をつかんでいるため、その言葉がどれほどの意味を持っているのか、どの範囲で述べられているのかということが理解できるようになるためです。

また、実際臨床においても、患者さんから学んだことを、自身の身につく確実な知識として蓄積していくことができます。

この書はそのような、東洋医学における鍼灸道の、自由自在な世界に入るための門となります。

そのため、この書物を、一元流鍼灸術の門と名づけました。

平成十六年三月十八日

伴 尚志   謹識











一元流