もともと身体がむくみがちであり、便秘もあり脾気の弱さを伺える素体であった。 25歳頃から、鼻炎などのアレルギー症状が出ている。杉などの特定の植物に依存する物 ではなく季節の変わり目になると悪化している。季節の変わり目という脾気に負担がか かる時期になると、もともと少し弱い脾気により負担がかかり、その弱りに乗じて上焦 の鬱滞がつよくなってしまい鼻炎などの症状が出ていたのではないかと思われる。 28歳の頃3ヶ月ほど前から下腹に違和感があり、茎捻転により右卵巣摘出手術。下焦に おいて明瞭な瘀血が生じ、手術により解決したものと思われる。 30歳の頃、小さい筋腫などもみつかり、下焦における瘀血は生じやすい状況が継続して いた。不妊治療を始めることによって、むくみや便秘がひどくなっており脾気腎気に負 担がかかっていることが伺える。また、脾気腎気が弱ったために、肝気が立ちやすくな ってしまい、肝鬱が生じ、便秘がよりいっそうひどくなると言う悪循環も生じていった 。
36歳にて無事に妊娠。しかしながら、妊娠によって、腎気の負担が増え脾気へのバック アップが減少することにより、いっそう便秘、むくみがひどくなっていった。産後も脾 腎が補われることがなかったため、産後半年で妊娠前よりも6キロも体重減少するとい う急速な気血両虚がおき、器が一段小さくなってしまったと思われる。
39歳、前回と同様な方法で妊娠に挑戦し、2回の体外受精をおこなったが妊娠しない。
体重も、むくみ便秘の影響で60キロから67キロに増加している。
初診時のお身体には、心下のつまりがきつく、百会熱感という上焦でのつよい気逆を示 し、中脘の固さ、臍周の冷え盛り、脾兪のゆるみという中焦の動きの悪さが明瞭である
。 このつよい上焦での気鬱、中焦脾気を中心とする動きの悪さは、全身の気血の巡りを 低下させ、下焦においてはより瘀血が生じやすい状況を生んでいる。板のように固い下 腹、少腹急結、腰陽関あたりを中心とする広い細絡、骨盤部の硬さ、次髎の堅さなど体 表観察でも下焦における瘀血や気血の動きの悪さが明瞭である。また子宮を支える督脉 も、大椎、接脊、腰陽関部に細絡があり、気血の巡りが悪く、子宮へのバックアップが 弱いのではないかと思われる。
また、いつごろかは判然としないが、大椎盛り上がり、 左合谷こそげ、列缺緩みなどから風邪が内陥し、気の上逆をきつくし、脾腎を中心とす る生命に負担をかけていると思われる。
産後から補われずにいる脾腎の弱さに乗じてつよい肝鬱が生じていること。風邪の内 陥が生命に負担をかけていること。この状況が長期にわたっていることにより瘀血の状 態がより固定化され、妊娠の成立にも影響を与えていると思われる。
弁証
脾腎両虚 肝鬱瘀血 風邪の内陥論治
益気補腎 益気補脾 疏肝理気 温通散寒
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